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恍惚コラム...

第324回

 2年ぶりに、ある旧友と再会した。2年前のコラムに書いた、それ以前からもすっかり疎遠になっていた男である。大学を卒業して以来足かけ8年。好きか嫌いかと問われれば迷わず好きだと答えたい男なのにもかかわらず、まだ2回しか逢っていないのはなぜなのか。その点については上述のコラムをご参照いただくとして、まあともあれ物凄い事情から俺たちは再会することとなったのである。

 さて、その事情とは一体何か。これを詳述してしまうと彼のプライバシーに触れるので難しいところなのだが、ともあれある全国誌にカメラマンたる彼の愛妻と愛犬の写真が載っていたのだと思っていただきたい。通勤電車に揺られながら、何の気もなく開いた雑誌。そこに芸能人でも何でもない知り合いの写真が載っていたら誰だって驚き、即座に連絡を取ることだろう(もちろん悪いニュースなどではないので、お間違いなく)。つまり、俺たちはこの1枚の写真が縁で再び相見えることとなったのだ。

 都内某所の串焼き店。俺たちはこの2年間にあった出来事を詳しく話し合うわけでもなく、ただただ世間話に興じた。仕事の話や、お互い既婚者となった身を案じることも確かにあったが、俺たちはつい先日逢ったばかりのような雰囲気のなか、くだらない話題で盛り上がったのだった。クルマの話や遊びの話を、さも若い大学生がするように―偉そうな物言いになるが、こればかりは腐れ縁というほかない。こう見えて友達の少ない俺のことである。そのなかでも、こうして屈託なく話をできるのはごくごく少数に限られる。22歳で結婚して以来、男友達に頼ったことはほとんどない俺。実際、それで不自由したことはないのだが、こうしてあらためて旧友と話をしてみるとやはり持つべきものは友達なのだなぁ、と今さらながら感じる。学生時代の俺は、現在の妻にばかりかまけて(?)彼のために費やす時間をなおざりにしてきた。それを今から取り返せるのならば、ぜひにと思う。

 上述のコラムに、こんな一節がある。
 「先頃の旅に出るにあたって、俺は去年の2月にこんなメールを出した。『・・・ただ、こういう言い方をしても信じてもらえないかも知れないけれど、俺はこの3年余りの間、写真の道、そして貴君の名前を思い出さない日は本当に無かったのです。そして人に俺の来歴を語る時には必ず貴君の事を交えて話し、誇らしい気分にさせてもらいました。貴君は俺にとっての誇りであり、また得難い財産だと思っている事を僭越ながら覚えておいて欲しいと思うのです。俺が再び写真に行くにしろ、また別の道を行くにしろ、「これが俺の職業だ」というものを見つけたらきっと逢わせてもらいたいと思うのです。』」
 
 俺の職業は見つかったのだろうか? 少なくとも2年前よりは素直になった俺。枯れているのか、それとも育っているのか。渦中にあってはわからない気持ちに揺れ動く、30歳の初夏のお話。それにしても、人が生きる世の中はあまりに狭い。



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