第32回
第31回からの続き)
さて、そんなこんなで久下戸の大地に翔鷺祭の夜明けがやって来る。俺は別段朝早く登校することもなく、優雅にサイクリングを満喫しながら白い巨塔へと毎年向かった。
 翔鷺祭には、毎年オープニングセレモニーというか、一般公開を始める前に校内だけで生徒会の挨拶だの、校長のしゃべりだの、金に物を言わせて芸能人を呼んで講演会を開いたりする時間があった。俺が高校一年生の時分には寺尾友美(<この字だっけ?)と宍戸留美(みんな〜覚えてるか〜)を呼んでコンサートを開いていたりしたものだ。宍戸留美の「地球の危機、地球の危機、地球の危機」と連呼するあの曲は一体何だったのだろう・・・。そして写真部員は写真部の特権とばかりに最前列に陣取って望遠レンズを構えて臨戦態勢だったにもかかわらず警備員にカメラを没収されてしまったのは忘れ難い思い出だ。そんな中、最前列にあえて行かず、後方から密かにEOS−1&EF100〜300ミリ5.6Lを構えていた部員W氏(俺じゃないヨ!)だけが撮影に成功したため、後から部員の非難を浴びたのももう8年以上前の事になるのかと思うともう涙がちょちょ切れるというか、父さん情けなくて涙も出やしねえ。懐かしいねえ。その後も川越東高校では大仁田厚を呼んで講演会を催していたりしたのだが(これはプロレスファンの生徒会役員&専任顧問の陰謀ではないかと今でも言われている)、早く写真部の方に行きたい俺は、どんなゲストが来ようともまったくその話は耳に入らず、心は既に展示室の方に飛んでいたのだ。
 大体昼過ぎのことだったろうか。そんなセレモニーが終わって翔鷺祭の一般公開が始まるのは。俺達写真部員は展示室の扉を開け、一般のお客様(特に女子高生)の御来場をお待ち申し上げた。御存知のように川越東高校はとっても僻地にあるため、アクセスするためには自家用車もしくはスクールバスの利用が必須となる。と、いうことで、バスの時間に合わせてそれはもう全国各地から女子高生が訪れ・・・ることはなく、パラパラと展示室の前を通り過ぎる女子高生の数が増えたり減ったりするだけなのだった。バスの時間に合わせて。
 昨今は御存知のように写真ブームなのであるが、少なくとも俺達が現役であった頃はまだそんなブームも始まっておらず、なかなか無理やり客引きでもしないと人は入ってこないような状態だった。(あっ、最近もか)で、名物となったのは客引き。
 校内を回遊する女子高生を一網打尽にするべく我々は様々な作戦を弄したのだが、その中でも忘れることの出来ないのは井森美幸作戦だ。これはフジカラーの販促用の井森美幸等身大パネルの、彼女が手に持っているフィルムの部分に顔が入るような穴を開け、そこに自らの顔を突っ込んで通行人を驚かす(?)という作戦で、そこそこの戦果を得ることが出来たものだ。それからローリングシャッター。展示室の前の廊下でこの伝統芸を披露したときにはもう鉄人28号が出てくるプールの水状態で人が退いていった・・・。また、写真部的には定番とも言える記念写真サービスも行った。これがまた大変面倒で、撮影した写真を後日郵送して差し上げるというサービスだったのだが、写真と宛先が一致しなかったり、ペンタックス67でストロボを使っているのにシャッター速度を1/60にしてしまう輩が居て画面の半分が写っていなかったり(正解は1/30だヨ!)、なかなか現像・プリントしなかったために結局ウヤムヤになって送らなかったりと、それはもう聞くも涙、語るも涙の大悲劇だったのである。しかし、本当の悲劇は撮影現場にあったのだ。カップル・・・。そう、カップルこそが我々童貞写真部員どもにとって最大の敵!世界を敵に回しても我々はカップルと闘いたい!!少なくとも当時の俺はそう思っていた。当時の女子高生はガングロではなかったが、ギャルギャルした女子高生と日本男児・川越東高校生徒との取りあわせは実に不快!!だった。今でもそうだけど。そやつらが能天気に「写真、撮ってくらは〜い」などとのたまっちまうのである。はいはい、そりゃー一応お仕事だから撮りますけどね。心の中では誰もが「コロス・・・」と思っていた筈なのである。そんな俺も今では所帯持ちかあ・・・。
 それから展示室を休憩室代わりにする輩にも閉口したものだ。なにしろ展示室は、「仕切りが多くて人目につきにくい」「涼しい」「静か」の三拍子が揃っていたために、写真を見もしないのに窓際で中庭を見下ろしながら女子の品定めをする輩やダベリに来る女子高生などの巣窟になりやすかったのだ。それでも中に人がいるだけマシだったので、俺は別にどかそうともしなかったのだが・・・。
 何だか悪い話ばかりが続くのだが、もちろん俺はこれらのエピソードを悪い思い出としてとらえている訳ではない。どれもいい思い出だ。ほら、好きな子ほどいじめてしまうような感じ。
 では来週は、翔鷺祭を語る上で欠かせないOBの皆さんなどについて書きたいと思う。がっ!、来週はその翔鷺祭本番につき更新出来ないかも知れないので、悪しからず。イイネタをいっぱい仕入れて来たいもんですな。更新の件は随時お知らせするので、チェキラ!!




メール

帰省ラッシュ