今週は、新入部員を獲得するべく考えた俺の駄文を紹介。こんなんで部員が来たら苦労しないねえ。もっといいのを誰か書いて下され。
川越東高校写真部・・・一部のオカルト愛好家の間で伝説として語り継がれている聖地の名称である。それは長い間場所が明らかにされていなかったのだが、この春遂に、第十三代宗主・コモエスタ小森氏によって遂に一般に公開された。
その桃源郷は埼玉県川越市久下戸六〇六〇、川越東高校の二階にあった。その付近からは秘儀に使用されていると思われる薬品の据えたような臭いが漂っている。周囲の人々は、果敢に写真部に挑もうとする私に畏怖と好奇の視線を送っている。ある茶髪の青年が話しかけてきた。「あなた写真部に行くんでしょ。だったらコレを持つヨロシ。」青年が私に手渡したのは、この地方で魔除けに効果があるとされる「ランチ」の食券。このプラスチック片には写真部員の態度を軟化させる効果もあるというのだ。私はそれを握り締めると、いよいよ「暗室」と書かれた引き戸に手をかけた。その時私は、手に何か熱いものを感じた。熱せられているはずもない引き戸のノブ。私は一瞬手を引いてしまった。すると地鳴りのような轟音とともに扉が開いた。
「写真部に、ようこそ・・・」
私がそこで見たのは、紛れもないあの伝説の宗主・コモエスタ小森氏だったのだ。私はこんなにも早く小森氏と謁見することになるとは思わなかったのでかなり動揺した。ふと左を見ると、そこにはもう一枚の扉が。どうやら総本山は二重のガードによって守られているようだった。焦る私を見て、小森氏はまたもこう言った。
「写真部に、ようこそ・・・」
その柔和な視線は、あたかも私に写真部に入れと言わんばかりだった。しばらくの沈黙の後、小森氏が何もしてこないと分かると私は二枚目の扉を開けた。
眼前に広がったのはまさに桃源郷の風景。私は超常現象研究家として世界中の様々な「聖地」と呼ばれる場所を巡ってきたが、一目見ただけでここまで神々しい気持ちになれる場所はここが初めてだった。黒ずくめの制服を着た修行者達が、至福の表情を浮かべながら思い思いに修業に励んでいる。それはまるでガンジス川河畔の景色の様だった。流しで沐浴する者、黒板に紋様を描く者、果ては謎の黒タンクにバテレンの妖術液を注ぎ込む者まで。
彼らは異邦人の私にも慈悲に満ちた視線を注いでくれた。そしてそのうちの一人が、自らの写真部に入った経緯と、ここで起こった奇跡体験について語ってくれた。
「僕も写真部伝説を聞いてずっとここを捜していたんだよ。そう、五年も中学浪人をしてね・・・その間には色んなことがあったよ。家族には見捨てられ、彼女なんか勿論出来ない。道を歩けば必ずウンコを踏むし、よっちゃんいかのクジで当たったことなんか一度もなかったんだ。ヒドイ時なんか、一日二五六個も買ったのに一度も当たらなかったよ。でもここに入って僕は変わったね。クジでは連戦連勝、『ガリガリ君』を買えば腹を壊すほどたらふく食えるし、ウンコなんか向こうから逃げていくよ。ウンコを踏もうとしても何かこう、スッとスライドして踏めないんだ。コレはちょっと悔しいんだけどね。二度とあの感触を味わえないと思うと・・・。でもココに来てから体調もいいし、彼女も出来た。なーに、ほんの藤原紀香似のナイスバディだけどね。じつはこの間宝くじを買ったんだけどさ、まるで当然の様に一億六千万円当たったよ。まあこんなはした金校長にくれてやったけどね。あの嬉しそうな顔ときたらなかったよ。もう写真部はやめられないねえ。」
そんな彼の表情には、何もかも超越した境地が感じられた。
写真部のこの神秘パワーの秘密はズバリ御神体の「クゲドストーン」。このクゲドストーンには宇宙パワーが凝縮されており、運命をまさに意のままに操ることが出来るのだ。この石の産地は部員のみに伝承され、一般には手に入れることは出来ない。
写真部・・・ここには宇宙の神秘が宿されている。私も早速コモエスタ小森氏に入部届を提出することにした。みなさんも一度は訪れてみてほしい。あなたの中で、何かが変わる。