第78回

 学歴、職歴云々をかなぐり捨てて、ブルーカラーの世界へ飛び込んだ俺なのである。元々人様に誇れる学歴を持っている俺ではないし、そんな事はさして気にしていなかったんだけれども、最終学歴が高校卒業、いわゆる「高卒」の人々に対しての誹謗中傷を行っているサイトを目にしてしまい、近ごろは一人になると高卒擁護論ばかり考えている最近の俺なのであった。ブルーカラー=「高卒が仕方なくする職業」という認識が世間の何処かにあるようだから。
 そうした人たちの家柄だとか環境だとか、果てには遺伝子や収入の問題まで持ちだして「高卒は不幸だ、無能だ」とそしる事は確かにそうした趣味の人々にとっては快感、なのだろう。心の奥底では理不尽だと思っていながらする事が快感につながるという事は誰でも承知しているだろうから(例えば具合が悪くなると知りつつ痛飲したり、生活が苦しくなると分かっているのに博打に走ってしまうとかいうことだろう)。だがしかし、その「趣味」が他人に迷惑をかけるとなると、如何なものだろうか。ロリータ趣味が高じて少女を誘拐してしまったり、SM趣味の果てに人を殺めてしまったり、小さなことでは暴走族がうるさい音の出るマフラーを付けて近所に迷惑を掛ける、なんて事もあるだろう。これらは全て同好の士の間で穏便に済ませておける事なのである。その趣味がさも常識であるかのように振る舞い、その価値観を無関係な人々に強要する時に不幸が起きるのである。ロリータ趣味の人は同好の士同士で語り合って憂さを晴らすべきだし、SM趣味の人はきちんとその手のパートナーを見つけるべきだし、暴走族の人はせめて音だけは出してはならないと思うのである。さもなくば自分も周りも同じように不幸になるのだ。世間に夥しく居る大卒の人・高卒の人、あるいは中卒の人。それらが互いに反目しあうのは宿命だと思うが、それをことさらに表現することは社会の根幹を揺るがす一大事につながると思うのだ。だからそう思うのは勝手なのだが、あくまで隠れてしなければならないと思う。まあそのサイトは隠れてやっているつもりなのだろうが・・・。
 何しろ人間、何かを生産していなければいけないと考える。高卒が生産・流通の現場でしか働けないという意見があったのだが、「でしか」という考えも、これまた趣味の領域に入るのだが「常識」ではない。そういう人々は自分がどれだけ物流・生産業の恩恵に浴しているかを熟考すべきだ。インテリやブルジョアジーの人々が金を払って手に入れている様々なモノ。それらは「高卒」の人々の労働力によって作り出されている事をまさか知らぬはずはあるまい。まずこうしてパソコンを動かしている電力。これとて恐らくそうした人々がいなければ存在しえないものだと思うし、これからやって来る本格的な光ファイバー網も、実際の現場で敷設するのはそうした人々なのだと思う。そうした人々に対して「意志もなく使われている」と思うのは自由だ。しかし、その行為の重みに思いを致したとき、われわれはその言葉を発することは出来ず、むしろ尊敬の念が湧いてくるのが道理だと思うのだが。大卒にだって何のために生きているのか分からなくなっている人はいくらでも居るし、その働きに見合わない賃金を貰っている(貰い過ぎ、という意味だ)人間もまたいくらでも居るのである。やはり直接的にモノを作る仕事が一番尊いと俺などは思うのだが。
 高卒だろうが中卒だろうが大卒だろうが、この時間を同じ空気を呼吸しながら生きている。別段美談を語ろうとは思わないのだが、職業、学歴に貴賎なく、罪を憎んで人を憎まずだ。学歴が低いからと言って犯罪を犯しやすい?偶然だよ・・・。


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