先日の土曜に、ひさかた振りに故郷・川越に帰った。中学校の同窓会に招かれたのである。幹事は大変な苦労をして人を呼び集めたのだが、その努力にもかかわらずメンツは当時のクラスの半分くらい。それでも懐かしさは一入だった。思えば中学を卒業してから9年目。みんながどこの高校に行って、それからどんな人生を過ごしてきたのか皆目見当もつかなかったのだが、色々な人の話を聴いて感銘を受けた。結婚した人。就職した人。まだ学生の人。はたまた遠くに住んでいて来られなかった人。様々な運命や人生がそこでるつぼをなしていた。
街を歩けば、そこにも様々な人生があるだろう。しかし、中学時代を同じ立場で過ごしてきた人たちの変貌ぶりを見るのはやはりリアリティーがある。過去を知っているだけに、現在とのギャップに驚きを禁じえないのだ。まあそんなに数奇な運命をたどっている人もいなかったのだが。
そんな人たちと、9年間の時を経て酒を酌み交わす。始めは何だかぎこちなかった会話も、酒の力を借りて次第に盛り上がる。昔は苗字でしか呼べなかった女の子を名前で呼んでみたりする。昔なら云えなかった事が平気で口をついて出る。「シゲキってさー、昔オタクっぽかったよねー。」そんな事を唐突に云われたりもして照れ臭い思いもした。それも9年間という時間の為せる業。時の力。
時間が解決する・・・なんてフレーズを良く耳にすることがあると思う。これは全くの真理だ。人は都合のいい記憶しか残さない。辛さも悲しみも、いずれは忘却の彼方に葬り去られる。残るのは甘い思い出だけ。それで俺は生きていかれる。記憶がハードディスクの中のデータのようなものであったならそれはとても不幸なことだ。何月何日、何時何分にこんな事があったと正確に思い出すことが出来ないからこそ、良い甘い思い出は大切なのだ。
話は全く違うが、先日高校の写真部の顧問先生から電話があり、「高校写真展の審査員をしてほしい」との事。こんな事を師匠に話したら「10年早えぇ」と云われるに違いないのだが・・・。是非受けてみたいものだと思う。若い写真を見て、俺も新しい作品作りをしたいものだ。