第411回
時はまさに2009年。こんな大げさなことを書いても内容とはちっとも関係ないのだが、いわゆるテレビ放送の地上デジタル波化(以下、地デジ)が2011年に到来し、既存のテレビがあと1年半くらいで映らなくなるというお話。 今、家にあるテレビはソニー製の28インチ5万円(確か)。もちろんブラウン管仕様である。買ったのは5年前で、自分が今の会社に入る前のこと。すなわち無職状態。無職なのによくもこんなモノを奮発したものだと今更ながら思うのだが、結局今でも飽きることなく使っているのだから、まあいい買い物をしたといえるだろう。政府やお役人は新しいテレビを買ってほしいと躍起になっているようだが、今の時点で快調に動いているテレビを慌てて買い替える必要はまったくない。余裕がある人や引越しなどの機会がある人が買えばよい。そう考えるのは俺だけではないはずである。 さて、そんな地デジであるが、施行まで1年と少しであるにもかかわらず、それに対応したテレビの普及率が5割に満たないという話を耳にした。俺の印象としては、ヨドバシでもビックでもジャパネットたかたでも地デジ対応テレビを売りまくっているのでこの数値は意外だったのだが、自分自身が買っていないのに人様のことは言えまい。きっと、俺が上に書いたことと同様に考えている人が多いのだろう。映らなくなったらそのとき考える。いたって真っ当な考え方ではないか。 しかし、それでもXデーは迫ってくる。遅かれ早かれ、その日までに我々は地デジに対応しなければならないのだ。すると、その地デジ対応テレビをいつ買うべきか? という話になってくる。2011年に入るとその商戦は熾烈をきわめるに違いないが、シーズンオフのエアコンやストーブが安くなるように、そのシーズンを避けて早めに買っておくほうがよいのかもしれない。あるいは、しばらくテレビなしで過ごして数ヶ月後に投げ売り状態のものを買うか……。ただ、エアコンやストーブは服を脱いだり着たりすれば何とか使う時期をずらせるものだが、地デジは(予告どおり移行するならば)その日を境に確実に使えなくなるというところが辛いところである。競争が熾烈な家電業界で、まさか便乗値上げということはまずないと思うが、こんな想像をしてみたりする。 また、俺が疑問に思っているのは、「既存のテレビであっても、外部チューナーをつければ地デジは映る」という点がまったく周知されていない点である。秋葉原あたりの電気店、いやちょっと気の利いた大型の電気店であれば、テレビ売り場の片隅に密かに置かれている地デジ用チューナー。値段も1万円前後と、なかなかリーズナブルである(正直、まだまだ高いとは思うが……)。画質は当然低下してしまうものの、とりあえずこれを従来のテレビにつなげば地デジ時代も怖くない! ということを周知するのもお役人の務めと考えるがいかがだろうか。もっとも、地デジ開始後にも対応したテレビを買うことができない所得層の方々にはこれと同じようなチューナーが配られるという話も聞いたことがあるので、語弊はあるが自然とそうした棲み分けができていくものとも考えられる。果たして、俺はこのチューナーを買うべきか、テレビ本体を買い換えるべきなのか……。というよりも、所得にかかわらず希望者にはすべてこのチューナーを配れば一挙解決ではないのか!? 不景気の折、どこかが儲けたいことはよく分かるのだが、国民すべてが数万、数十万円を払えるとは限らないのだからして。あるいは、その頃にもう一度「定額給付金」を出すかのどちらかだ。 こうした話をしていると、1990年代の初頭に世の中を騒がせた「AMステレオ」(はじめて聞いた時は超感動したが、いつのまにか下火に)や、2000年代の初頭に一部ブームを呼んだ「モバHO」(誰も知らないか……)などを思い出す。しかし、これらは既存のテレビやラジオと共存するものであって、従来のものと完全に入れ替わるものではなかった。2011年、Xデーを迎えたわれわれの目前にはどのような景色が広がっているのか? 大型液晶テレビが置いてあるといいんだけど……。 |