第388回
長い長い正月休みもいよいよ今日で最後となった。読者の皆様もきっとこの休みを満喫されたことであろう。関東地方でも一時は雪が降るなどと言われていたがそうしたこともなく、穏やかな年明けだ。それにしても、長い休みが続くと仕事が始まるのが億劫で仕方がない。いつもは数週間休みなく働いて何も感じないのだが、こうして長い休みを挟んでしまうといけない。いったい、長期休みの後に「仕事行きてぇ〜!」と思うサラリーマンがこの世にどれほどいるのか。知りたいものだと思う。きっと俺は特例ではないはずなのだ。ともあれ、今年も引きつづき暇を見ては更新していきたいと思っているので、ぜひよろしくお願いしたいのである。 さて、休みと言いながら一昨日(1月4日)出勤していた俺である。果てしない原稿の山との戦い。締め切りを破る著者がいれば悩むのは当然だが、今の俺は昨年中に収録した座談会の後始末にはまっている。座談会。それは禁断の木の実である。人さえ揃えれば大量の文字原稿が即座にでき、後の督促やらに手間がかからないのは最高だが、人の話す言葉というのはたいへん曖昧なのである。ただ耳で聞く分にはとても分かりやすい話をする人であっても、それを録音し、逐次文字にしていくとまた話は別なのである。同じことを何度も繰り返す。 まあ仕事の愚痴はもういいであろう。実はそんな4日のこと、俺は前職の上司から電話を受けたのであった。実に5年ぶりのことである。何でもその人、俺の実家周囲の電話帳を取り寄せて同じ名字の人に片っ端から電話をかけたのだとか。いったい、新年早々そんなストーカーまがいの行為に彼を駆り立てたものは何だったのだろうか? 俺は何かマズイことをしたのだろうか? ……それはお察しのとおり、仕事のオファーであった。その人は俺が勤めていた会社(つまりビルメン=掃除屋さんだ)をすでに辞め、違う会社で給食の委託業務の手配(こう書くとやたら回りくどいが)をしているのだが、その業務を拡大するために人を求めているのだという。あまり詳しく書くとその人の業界にインパクトが走る(!)ので避けておくが、要は小泉前首相が打ち出した「官から民へ」のコンセプトのもと、なかなかおいしい仕事が斯界には出回っているのだそうだ。普段から特殊な雑誌の編集のことばかり考えている俺にとっては新鮮な話。全国津々浦々を廻り、顧客とパートの手配をするという……。前職でも似たようなことをしていたので懐かしさもひとしおである。今、その会社でその業務に携わっているのは65歳の社長を筆頭に60歳のその人、そして同じく60歳の人がもう一人という状況で、なかなかたいへんそうなことは伝わってきたが、いかんせん今の仕事からも抜けられそうにない。よって丁重にお断りしたのだが、こうして今でも話をいただけるのはありがたいことである。せめてあと2、3年早ければ……などと考えてしまった。さらに、このオファーはその人のみならず、以前少しだけ仕事をいただいたことのあるその会社の社長からなされたものだと聞き、またありがたく感じたのである。 正月から、人の縁がたいせつなのだということが身に沁みた次第。そして、世の中は目の前にある仕事以外にもさまざまな仕事によってできあがっているという事実。わざわざこうして俺を訪ねてくださった、その人に感謝である。
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