第38回

のうのうと、それなりにアシスタント生活を続けていると至る所にボロが出てくる。学生時代から数えればもう足掛け6年もアシスタント稼業を続けているにもかかわらず、こんなメモを俺は日々とらねばならないのだ。
もはや馴れ合いで仕事を続けていては俺に将来はない。馴れ合いだからこそ、毎日毎日不満が噴出し、上も自分の子供を叱るかのように「生の」感情を俺にモロにぶつけてくる。仕事には禁物の、「生の」感情。それは馴れ合いから来る甘えにほかならない。俺にとっても、上にとっても。段々疑心暗鬼に陥ってくるのだ。ポル・ポトが自分の部下を粛清した心境が、俺には恐ろしいほどに理解できる。
毎日毎日、そんなことばかり考えていると正直「カメラマン何するものぞ」という心境になってくるから恐ろしい。昔のピュアな心は次第に失われ、残るのは地道に勤労する労働者の皆さんへの憧憬だ。カメラマンがカタギな仕事ではないと俺は言っているのではない。だが、その方が余程世の中の役に立っていると思う俺は、やはり昔の俺ではないのだ。


9月25日の注意点

●こちらを向いているときには何らかの用事があると考え、必ず目を合わせる。
●近くにあって、取れる物を無理に渡そうとしない。
●撮影中にずっとカメラマンの方を見るのではなく、余裕があればその間に他のことをする。

10月2日の注意点

●人の目を見て話を聞く。
●話は最後まで聞く。
●ファインダーの中で見えないと思われる所は自分が確認する。
●朝、機材の確認を怠らないようにする(フィルムの本数や小物など)
●慣れているはずのことが出来ないのは何故か→自信のなさ・恐怖心の克服
●話し方に気をつける→揚げ足を知らぬ間にとっている事が多いので注意。
●足のついたアルミケースは玄関先に置いてよし。
●自然にストロボを使うために、定常光とストロボ光の比率を必ず言う。

10月8日の注意点
●自分の都合で駐車場を決めるのではなく、なるべく近い駐車場を案内する。
●フィルター類やクイックシューなどを忘れがちなので注意。
●自分が取りに行けば忘れ物をしても良いのではなく、それでは間に合わない場合がある。

10月10日の注意点
●何をクルマから降ろすか確認してから降ろす。自分の都合では決められない。
●今日はテレビのスタッフを見た。何も言わなくても伝わる姿勢に感服。
●一つのことだけに集中できるのは集中力とは言えない。あらゆる事態を想定して、すぐに動けることこそ集中力だ。

10月13日の注意点
●出来ない道案内はするなと書いたが、それ以前にどんな道があるかをよく考える。
●声が出なければ何も分かっていないと見なされる。
●走ることは、アシスタントの基本。
●何度も露出を測ってカメラマンのペースを乱すのならば、安定している状況ではなるべく測らないようにする。

10月20日の注意点
●ポラを引く時に、絵がどんな向きになるか考える。
●傘立て。いかにも傘立てに見えず、綺麗なものなら無理をしてどかす必要もない。
●手持ちぶさたでも、カメラを空中で渡すのは迷惑。
●人の話を、心をニュートラルにして聞く。先入観を持って聞くと過ちを犯す。
●人に作品を評価してもらうことを歓びとせよ。

10月23日の注意点
●すぐに撮影が始められるようにしてこそ、早く行った甲斐があると云うもの。
●自然光の撮影の際に、後何分で雲が切れるとか、どのくらい露出が変動したのか即答出来るのがプロと言える。
●レフ板を持ったままにしない→どの位置でレフを当てていたか記憶しておき、他の作業に移った後もすぐに復帰出来るようにする。
●被写体に当たる光源の大きさによる露出の変化→面光源だからといって、どんな位置でも露出が変わらないと考えるのは誤り。




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