恍惚コラム...

第377回

 大学を出た頃から、だいたい2年周期で新しいパソコンを買ってきた俺である。だが、この原稿を書いているPowerBookは2年2ヵ月、自宅奥の和室に置いてあるPowerMac G4に至ってはすでに4年目に突入してしまった。Macに詳しい方にはよく理解していただけるだろうが、俺はこんなにもMac派を自任していながら、一度もG5マシンを所有することなくここまで来てしまったのである。われながら意外なことだ。そして気付けば世の中はIntel Mac一色。時の経つのはまったく早いものである。今や「PowerPC」対「Intel」間の論争もほとんど聞こえなくなり、あんなに違和感がありまくりだったIntel Macはそれなりに売り上げを伸ばしている。

 それにしても、昔は2年おきにパソコンを買い換えなければならない理由が厳然としてあったように思える。つい数年前まで、CPUのクロック周波数はそれこそ倍々ゲーム、いやそれ以上のスピードで進化していたからだ。個人的な遍歴をここで述べると(68kMacは除く)、PowerMac G3 DT233(PowerPC G3/233Mhz、1997年発売)→PowerMac G4 Cube(PowerPC G4/450Mhz、2000年発売)→PowerBook G4 Titanium(PowerPC G4/667Mhz、2002年発売)→PowerMac G4(Mirrord Drive Door、PowerPC G4/1250Mhz、2002年発売)→PowerBook G4 Aluminium(PowerPC G4/1670Mhz、2005年発売)……。この中には新品で買ったものも中古で買ったものもあるが、とにかく新しいマシンに触れればとくに何のアプリケーションを走らせなくとも(起動やウインドウの操作などで)その速さに感動できたものである。またこの間、それを支えるハードディスクの容量や速度もCPU以上の進化を遂げており、もはや説明するまでもない。俺はMacの話しかできないが、Wintelの世界ではより激しい戦いが繰り広げられていたことだろう。

 だが、最近はどうだろうか。2003年に発売されたPowerMac G5を買いそびれて以来、どうも俺はパソコン全般の体感速度がそう速くなっていない気がしているのだ。たしかに、買えなかった僻みがあることは否定しない。むしろ、「ある」と宣言したいくらいだ。それにしても、電気店でMacProをいじるにつけ、会社に置いてあるG5/2.3 Dualで仕事をするにつけ、「もうこれで十分なのではないか」と思わされる。たしかに重い処理をさせた場合のパフォーマンスはすばらしいのだが、こうして文字を書いたり、Webに貼り付ける程度の画像を作っている限りではこの2年前のPowerBookで何の支障もない。まったく困ったものなのである。Apple信者としてはどんどんお布施していきたい(爆)ところなのだが、どうもこのPowerBookは丈夫にできているようで、こんなに使っているのにキーボードのテカリも出なければ液晶も全然暗くならない。さすがは最終版に近いモデル(現在はPowerBookというブランド名はなく、MacBook Proという名前になっている)といえよう。品質が安定している。また、ハードディスクにも余分なファイルは貯め込まないようにしているからパフォーマンスの低下も感じない。世間を騒がせた燃えるバッテリーも、メーカーによって無事交換済みだ。そして、さらに悪い(?)ことに、AppleはIntel化をすすめるにあたってプロシューマー向けの機種のデザインをほとんど変更していないのだ。iMacやMacBookは劇的に変わったが、MacPro(旧PowerMac G5)とMacBook Pro(旧PowerBook G4)は一見ほとんど変わらない。仕事柄、PowerBookやMacBook Proを持ち歩く歯科医師をよく見かけるのだが、俺にも区別が付かないときがある。このデザインはおおいに気に入っているのだが、あまり変わらないのも購買意欲をそぐような気がしてならない。実際、自分の身の回りではまだまだPowerBook G4からMacBook Proへの乗り換えは進んでいない。

 しかし、である。この10月、全Apple信者へのお布施指令が下る。新OS・MacOS 10.5“Leopard”発売。これに合わせ、俺も一応何かを買うつもりではいるのだが、どうなのだろうか。このPowerBookで快適に走ればそれでも良いのではないか? 自分自身の気持ちが分からず、悶々とする今日この頃なのである。ハードディスクをグレードアップすればあと数年はいけそうな気もするし……。とにかく、何かが欲しいのにそれが何か分からないというMac信者が最近多いのではないかというお話。



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