ケータイ文学という言葉がある。賢明な読者諸兄にとってはすでにご承知だろうが、これはあの打ちにくさ極まりない携帯電話の文字入力システムを操り、その不自由さをも味方に付けて現代的な文学を紡ぎ出そうという試みである。すでにいくつかの著名な作品が世に出ているようだが、俺は寡聞にしてそれに触れたことはない。できるなら、携帯電話の類で文字を打つのは避けたい俺のこと。携帯電話で小説を書いたという努力は認めるものの、そこから生まれた小説をカネを出してまで読みたいとは思えないのが本音である。
しかし、である。先々週以来1日も休みのない俺である。いま、こうして仕方なく携帯電話で(いわゆるスマートフォン、であるが)本稿を書きはじめている。(筆者注:本稿は土曜日の丸の内線の車中で書きはじめたが、さらに日曜日の武蔵野線の中でその続きを書いている。行き先は海浜幕張だ)ともかく、何か書かないことには2週連続で更新が落ちてしまうため、すわ失踪かと疑われかねないのである。で、この小さなボタンでイヤイヤ文字を打っている俺はあることに気がついた。この文字を打っている間じゅう、画面の下にチラチラと出てくる単語たち…そう、ご存じ予測変換機能のウィンドウである。モバイルな文字打ち環境を超快適にしてくれるコイツだが、これを悪用すればもしかしたら何も考えずにアバンギャルドな文章が書けまくりでウハウハなのではないか。もしかしたらすでにどこかで発表されているかもしれないが、試してみる価値はあるだろう。だが、まず最初に何か単語を打ち込まなければ予測変換機能もスタートしない。……やはり、栄えある最初の単語はやはり「エクスタシー」で決まりだろう。
例文1:
「エクスタシーって思ったから。私達がいい事だと思ってきたので、ここで発表だ!日本の中の自分だけど、、ここはもう必要なのやろ?。最近見たけど、あなた達はどうすれば良くなるので?だから今年のやろ?というわけじゃない人より。そんな情報が入る事でしょう。。さて、あなた達の場合はそうするか、自分は」
…ここで操作ミスのため、文章が途切れてしまった。しかし、「エクスタシー」以降は一文字も打ち込まずに来たことを考えるとなかなか興味深い結果とは言えまいか。では、次は「サラリーマン」ということでいってみよう。
例文2:
「サラリーマンについて必要なことは、日本産の場合でーす。。最近見たねんけど、私たちの時はこの情報も考えずにメールしてきたからでしょう。。今のところなはず?さて、彼の場合は」
…またしても操作ミスで中断。よし、次は隣に座っている「カップル」ではどうか。
例文3:
「カップルについてお願い致します。最近見たのは隣に住んでいるので、彼たちは私たちのような問題を考えない。そんなわけで、今回できたのは私たちについてのところでーす!さて、あなたも考えずに住んでいただけまっかいな(爆)また、これを受け、ちょっとだけだったという感じでしょう♪さて今年の場合、僕たちについてのときへ行きますけどさあ(怒)日本産のメールという訳じゃなくて、ちょっとはその事についてお願い致しますよ!だから最近できねえんだ!あなたこそ見まっせ(爆)だからそのものにしましたので、、(後略)」
…後半、だんだん飽きてきて適当にボタンを押しまくってしまったのだが、かなり病気っぽい文章が書けたと思う。「お願い致します」、というくだりは特にリアルと言えよう。しかるべきところに提出すれば心神耗弱で無罪にしてもらえそうな勢いである。俺は昔、あらかじめ大量に登録しておいた定型文を乱数でつなぎあわせて謎な文章を吐き出す、その名も「ANAL」というソフトを開発(?)したことがあったが、そのソフトが一応意味のあることを言わせようと前後関係を考慮していたのに対しこの意味のなさ加減はむしろ清々しい。人間、文章を書くからにはどうしても意味をもたせようとしてしまうもの。普通の精神状態でこのような異世界に突入できる予測変換機能に乾杯である。掲示板荒らしにも使えるかもね! でも、これがアバンギャルドな新文学かと言えば……まあ答えるまでもないところだ。それでは今週は、予測変換機能が吐き出す文章でお別れだ! アディオス!
あれだけかも知れないでしょう(泣)またあなたもスタートとして仕事の疲れ、そんな時間の精神状態についての方に乾杯!さて最近……(本当にオチはありません)
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