第371回
プレジデントファミリーという雑誌がある。確か、日経キッズどうたら、という雑誌もある。いずれも小中学生の子供を持つ親向けの雑誌であり、その内容は「いかに子供に勉強せしめ、いい学校に入らせるか」に主眼をおいたものだ。電車の中吊り広告にいつも出ているので、ご存じの向きも多いであろう。時はまさに格差社会。給食費の支払いに汲々としている親がいるなかで、このような雑誌がブイブイ言わせているのはかなり皮肉である。そして、そもそもこの手の雑誌がコンビニで堂々と売られているのも不思議だ。こういう本は書店の片隅の、「学年別算数ドリル」「高等学校案内 埼玉県版」に寄り添うように置かれてしかるべきだと思うのだが、これらの本はシックな装丁を施されてどんどん一般雑誌のコーナーに並べられている。 昨今の少子化は、一部の階層にとって子育てをより豪華なものにしているような気がしてならない。少子化・晩婚化が叫ばれる昨今だが、街を歩いているとたいへん若い親と、その逆にたいへん年配? の親が目につく。ごく私見だが、最近の結婚は10〜20代前半で「できちゃった結婚」となるか、または20代後半以降で考え抜いた末に結婚するか、の2者に偏っているような気がする。俺は決してどちらがいいというわけではないのだが、前者ではどうしても親の若さ(=収入の少なさ)から公立の学校に入れざるを得ないだろうし、後者ならば少しは資金に余裕ができて私立校も視野に入ってくることだろう。で、後者ではそう何人も子供を作るわけにはいかなくなるから、いきおいいい学校に入れたくなると言う構図……。 まあ、その辺りはどうでもいいのである。俺が何を言いたかったかと言えば、そのプレジデントファミリーの最新号(2007年9月号)の第2特集の見出しに驚嘆したというお話である。 「親が就かせたい職業ナンバーワン 公務員という仕事」「一生安泰だった職場が変わる 今、狙い目は県庁!」「自治体の一般行政職と8つの専門職を紹介 職種別に給料の違いを見てみよう」……勉強させるためのHow Toについて語るのみならばまだ理解できるが、子供が実際になりたいかどうかも、なれるかどうかも分からない公務員の特集を親向けの雑誌に掲載してどうなるというのか。編集部では、これを読んだ親が子供に「今、県庁が狙い目だからしっかり勉強しなさい」「●●職の月給は●万円らしいわよ」と語ることを意図したのだろうか。いい学校に行かせて子供の将来の選択肢を広げてやるのならともかく、ここで将来の仕事を押しつけるような特集を掲載するのは、雑誌の方針としていいのだろうか? じっくり読んだわけではないので詳細は不知だが、どうしても気になって仕方がなかったので書いてみた次第である。 |