第363回
本当は本名を書きたくて仕方ないのだが、最近は何かとデリケートな問題が多いので伏せさせていただく。というのは、先週某高校写真部の後輩の結婚式に呼ばれて行ったというお話である。さいたま新都心駅から徒歩10分あまりの結婚式場。さいたま市民歴3年あまりの俺にとってはまったく未知の場所なのだったが、そこはまさに「迎賓館」。自らさいたまをバカにしているようで申し訳ないが、こんなところにこんな場所があったのか! という驚きを禁じ得ないほど豪華な場所なのだった。 正直、自分で結婚式を挙げたことのない俺のことである。いつも呼ばれるたびに、「こんなお金をかけて1日で終わっちゃうんじゃもったいないよな〜」というひねくれた感想を持ってしまうのだったが、今回は何かが違った。後輩ゆえの気安さだろうか? それとも地元に感じる素朴さだろうか? たいへん和やかな結婚式に参列させていただき、有り難いと思っている。 新郎とはもう10年来(?)の付き合いである。俺がまだ大学に入りたてで、高校の写真部に通い詰めていた頃に知り合ったのだった。「高校の後輩の結婚式に呼ばれた」ことを周囲の人に話すと、「高校の後輩に呼ばれるなんて、珍しいですよね」と必ず言われるのだが、俺と新郎の関係はそんな次元にとどまらない。普通、高校の後輩といえば自分が3年生の時に2年生、あるいは自分が2年生に1年生というようにどちらも同時に在学していたものをさすのだろうが、俺と新郎は俺が高校を卒業してから知り合ったため、厳密な意味では「高校の後輩」とは呼ばない向きもあるわけだ。それほどまでに高校写真部のコネクションは深く、その廃部が悔やまれる。事実、新郎は高校写真部関係の同輩、先輩を5名も招き、クラスの仲間はまったく(!)呼んでいなかったのである。 知り合った頃、俺は新郎が結婚するときのことなど想像だにしていなかった。それはそうだろう。自分は18歳の大学1年生、新郎はまだおろしたての学ランを着た高校1年生。結婚どころか「悪魔の方程式」(全女性の人口を若年代のものに限り、そこに自分の好みの女性が何%いるかという係数(算出法は忘れた……)をかけて自分にふさわしい女性が日本中に何人いるかを計算する式)を提唱し、まだ見ぬ女性を夢見ていた新郎を俺はただのチェリーボーイとしてしか見ていなかった。もちろん、部活にかける情熱や正義感には感心していたが、まさかその姿を見て色恋だの結婚だのを想像することはできなかったのである。そんな彼が、今こうして結婚式を挙げ、披露宴の上座でスポットライトを浴びている―どうりで俺も歳をとるわけだ。若い頃、俺にとって結婚式といえばアルバイトで写真を撮るために行く場所だったが、最近ではもう違う。おつきあいのあった方々が、わざわざその場所に席を設けて待っていて下さる会なのである。とはいえ、元写真部の血がおとなしく座っていることを許さなかったわけだが……。現役のビデオカメラマン1名、現役のスチルカメラマン1名、そしてカメラマンアシスタント崩れの俺を呼んだからにはどうなるか。それはもうメシもそこそこにシャッターを切りまくるのみである。式場のカメラマン顔負けのアツい写真群が新郎の許に届けられるのはそう遠くない。 ともあれ、たいへんおめでたい連休のはじまりであった。この連休は公私ともにたいへん忙しかったのだが、それはもう書くまい。改めて、おめでとう。嫁の操縦法についてはむしろ俺が知りたいくらいなので、気にするな! |