恍惚コラム...

第360回

 今週も徹夜明けである。3週連続で金曜の徹夜をキメると、もはや今日が何曜日なのか、そして今が何時なのかすら怪しくなってくる。日曜の朝に目覚めて本気で仕事に行かねばと思うのだから、これはもうビョーキなのではないか。まあ行けば行ったですることは山積しているし、行く価値はあると思うのだが、さすがに体力には限りがある。で、日曜であることをカレンダーで確認しつつ寝直すわけだ。

 さて、世の中では新車が売れないと騒いでいる。自動車雑誌などではこの原因として「若者が欲しがるかっこいいクルマがない」「メーカーが欧米の市場ばかりを見すぎ、日本にふさわしいサイズ・デザインのクルマを出さない」といった点を挙げているが、果たしてそうなのだろうか。俺は、何よりも長期のローンを組めるだけの自信が若い人々の間になくなっていることが原因だと考える。携帯電話など、世の中に他の娯楽が増えすぎたことを原因にする向きもあるが、それでも金があれば自動車にまわすのではないだろうか。事実、トヨタ自動車が昨年立ち上げた高級車ブランド・レクサスはそこそこの成功をおさめている(まあ、若者が買うクルマでもないのだが)し、やはりあるところにはあるのである。で、売れないと騒いでいるのは大衆車の方だ。これからクルマを所有しようという層を掘り起こすべく、各メーカーは躍起になっている。そしてお得なローンなどを弄して新規顧客の取り込みに努めているが、先述のとおり若者には長期のローンを組むという展望が見えないのである。

 たしかに、広告ビラには魅力的な数字が躍っている―「月々2万円、ボーナス月15万円の60回払い。60ヵ月後に残った残金は車両の返却で精算できます」などと。しかし、今の職を失ったらどうなるか。さらに、ボーナスが未来永劫にわたって支給される保証などどこにもないのである。今でこそこうした広告に「クラッ」と来てしまう俺だが、28歳になるまでまともなボーナスを受け取ったことがなかったのだ。ボーナスなど、しょせんあぶく銭。経営者の裁量でいつでもカットできる金を、長期計画のなかに入れ込んで良いものだろうか。そんなはずはない。新卒で大企業に入り、ヘタを打たなければクビになる心配のない人ならいざ知らず、28歳中途入社、しかも冒頭のような激務をこなしつつも薄氷の上を歩いている俺にとってはまだまだ危険な賭けなのだ。われわれの親の世代はボーナスで家を建て、クルマを買ってきたが、もはやそんな時代ではないのは周知のとおりである。世の中全体を俺の視点で斬るわけにもいかないだろうが、天下の自動車メーカーが売り上げ不振に悩んでいる理由ははこうした単純なことなのである。そして、一台一台の利益の高い高級車ばかりが売れ、大衆車の不振は続くのだ。余談ながら、俺がこの半生で組んできた最長のローンは学生時代に買ったレンズ・ディスタゴン18mmF4・12万円の12回払いである。学生時代の方が平気でローンを組めた、この皮肉。

 やはり新車が売れないのは当たり前なのだ。そして、これはひとりメーカーの責任ではないのである。天下の自動車メーカーが苦心惨憺しているのだから、やはり悪いのは現在の雇用情勢なのであろう。ちなみに今日(2007年4月8日)は統一地方選挙の投票日なわけだが、こちらも一体どうなることか……。



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