恍惚コラム...

第350回

 こと正月に限ったことではないが、俺の許には毎日強烈な数のスパムメールがやってくる。あまりにもバカバカしいものは「ザコネタ集積所」で紹介したりもしているのだが、その多くはザコネタにも満たないものばかり。通販業者から来るものや、アダルトサイトへの誘い。中国語や英語のものまで……。その内容はともかく、こうして毎日毎日人に読まれない文章を書いている人々が世の中にいることにまずは驚く。大体、読者の皆様はこうしたスパム・宣伝メールがきっかけで何かを買ったりしたことはおありだろうか? 少なくとも俺にはない。

 その昔、eメールはまさに電報だった。必要な人が必要なときに、必要な相手に向けて書く電報。実際の電報との違いはその費用が格安ですむことぐらいで、人々はそれを有り難がって読んでいた。メールソフトを起動するたびにときめき、送信するたびに「届いているだろうか……」という高揚感が胸を駆けめぐった。しかし今はどうだろう。もはや、純粋な私信に使えるものではなくなっているのではないだろうか? 安心して使えるのは携帯電話のメールやそれ専用に取得した各種Webサービス上でのメールに限られ、パソコンで、自分のアカウントで使うメールはすっかりスパムだらけになってしまっているのではないだろうか。俺は毎朝メールソフトを起動するたびに、感度の悪いラジオのダイヤルを回しているような気分にとらわれる。200通は下らない新着メールの件名に目を通し、そのうえで1通も自分個人に向けたものがないことを発見する朝の虚しさ。俺が使っているメールソフトには迷惑メールフィルタがついており、これはかなりの精度で迷惑メールを選別してくれるのだが、たまには間違うこともある。そこで結局はすべての件名に目を通すことになるわけだが、これがまったくもって重労働だ。もともと、人とメールのやりとりをすることが少ない俺である。本当に必要なメールなど、月に1回あるかないかなのだ。「jfellowship」「You qualify for our 5000 dollar scholarship」「Julie wrote:」「駅長 投稿流出不正乗車・キセルした女子校生たち」……外国人に知り合いがいない俺は英語のメールを読まずに捨てることができるが、これがもし外国を相手に仕事などをしていたらどうなることだろう? 想像するだにうっとうしい。

 このように大量のスパムメールが来るようになった原因のひとつとして、俺が一時期懸賞サイトに応募しまくったことが挙げられるだろう(まったく自業自得である)。皆様ご承知のとおり、インターネット上では無数の懸賞サイトがそれぞれの魅力を訴えている。某有名ポータルサイトにも「懸賞」のコーナーがあり、もはや懸賞で手に入らないものはないとも思える盛況ぶりだ。何しろ一般の懸賞ではハガキを使わねばならないが、インターネット上では何の元手もなしに簡単に応募できる。そのうえ、提供者側も電子化された個人データを容易に手に入れられるのだから言うことなしだ。

 この手軽さがまずは第一なのだが、俺がそんな懸賞サイトに応募しようとした理由はもうひとつある。それは、俺が以前使っていたMac―「PowerMac G4 Cube」がある大手ポータルサイトのネット懸賞で当たったものだったからだ。自分で当てたわけではなく、友人が当てたものを安値で譲り受けたにすぎないのだが、このことが俺のネット懸賞観を大きく変えたことはいうまでもない。20数万円もするものが、ほとんど労せずして当たってしまうというこの事実―まったく恥ずかしい話なのだが、ジャンボ宝くじが当たる確率よりは高いのではないだろうか(?)。それ以来暇をみてはそうした高額商品を狙っていたのだが、結果として自らその当選通知を見つけ出すことすらできないほどのスパムの襲来を招いてしまったのだ。まったく情けない話である。

 しかし、現代人の端くれとしてはメールチェックをやめるわけにはいかないものだ。いっそアドレスを変更してしまおうかとも思うのだが、それはそれで不便がともなう。毎日毎日、無駄にハードディスクを埋めていくスパムメール。読者の皆様はどのように付き合っておられるだろうか。今日も359通のメールがどこかへ消えてゆく。

迷惑メール


メール

帰省ラッシュ