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第338回
かつて、これほどまでにここの更新が蔑ろにされたことがあっただろうか? もちろん意図的にそうしたつもりは毛頭ないのだが、近頃の俺はあまりにも忙しすぎた。土曜でも日曜でも、いつ出勤・取材になってもおかしくない仕事であることは確かなのだが、先週までの3週間はずっと土日を押さえられていた(まあ先々週の土曜は半休で済んだが)。大手町から京都、そして新潟に至る地獄の出張ロードをひとまずこなし、昨日になって残してあった夏休みを1日だけ消化した今日この頃なのである。ここまで忙しいと、ランナーズハイという言葉の意味もよく分かろうというものだ。マラソンランナーが疲れすぎて気持ちよくなってしまうというアレである。仕事をしている自分が可愛くて仕方がない、そんな気持ち……。しかし、こんな日々にもある程度先が見えているからまだ救われる。 というのも、この忙しさは俺が他部署に異動する日が近づいていることにも起因しているからだ。今の会社に入って以来2年半、俺はある業界の動向を伝える(?)専門紙(新聞ですな)の編集部に所属していた。それが会社の意向により、この秋から某「歯を作り、それを装着する人々のための雑誌」(よく分からないだろうが、大人の事情で詳しく書けないのである)へと異動することが決まったのである。これはもう今年の春先から言われていたことなのであるが、何事も直前までまったく準備をしないタイプの俺である。あと1ヶ月という今になって急に焦りだしてきたのだ。現在進行中の連載を前倒しで入稿したり、異動など頭になかったころに依頼した原稿をどう獲得しようか(要は、締め切りが異動日以降ということである)と悩んだり、来年の連載を次の担当者に引き継いだり……。まあ異動しても社内にはいるわけだから何とかなるかと思いつつ、気が休まらない日々を送っているのだ。 まあしかし、ここに至るまでに2度の転職を繰り返してきた俺のことである。人がひとりいなくなったくらいで仕事は止まらないことは分かり切っている。カメラマン助手時代にも、清掃会社の営業時代にも……。そこで誰かが人を使っているかぎり、代わりはいくらでもいるのである。誰かが抜けたからといって倒産したような会社・部署を俺は知らない。逆にそのようなことがあったとすれば、俺はその会社・部署のありかたを疑わざるを得ない。 だが、その部署に残される人の不安は酌み取らなければなるまい。俺は先日、そこに残る社員から手痛い指摘を受けてしまった。曰く、「あなたの指示はいつも他人事のようだ」「あなたの将来のために、そういう態度は改めたほうがよい」……。3名のこの部署で、俺は一応最年長ということになっている。あとの2人はいずれも28歳、それぞれ入社1年半と1年といったところ。ただ付記しておかねばならないのは、彼らがいずれも印刷/出版業からの転職組ということである。ご承知のとおり、28歳にして何とか出版社にすべりこんだ俺とはキャリアが違うのだ。するといきおい、俺も強く出られなくなる。これが「他人事のような」態度につながってしまったようだ。立場はたしかに俺の方が上かもしれないが、キャリアは彼らの方が上。何ともいえない関係が俺を悩ませる。周りの人々がつぎつぎに抜けていったために、いつの間にか責任者のような立場になってしまった俺。そして、同じ歳の社員が2名だけ残されるこの部署……。 ここで、気の利いた言葉を書くことはまだできない。この1ヶ月の間に、俺はいったい何を残すことができるだろうか? そう自問する今日この頃なのである。 |