恍惚コラム...

第335回

 先日、夏休みが終わる前の晩。俺は高校時代の友人から突然「会いたい」旨のメールを受け取った。2年前に脱サラし、根津に喫茶店を開いた男である。毎週水曜日を定休日としている彼は普段から友達と会おうにもタイミングが合わず、世間一般が夏休みのこの時期を狙ってメールを下さったというわけだ。そこで、俺はすぐさま彼に電話を入れて自宅に招待することにしたのである。

 もとは川口市民だった彼も、今では町屋に住む東京都民。町屋には一度だけ行ったことがあるのだが、そこから俺の現住所である南与野までどうやって来ればよいのか見当がつかない。そこで俺は彼に訊いてみた。「で、どうやって来る?」すると彼は、何と「自転車で来る」と言うではないか。俺の同級生、ということは当年とって30歳。高校では文芸部と映画部をかけもちしていた彼がそんなアクティブガイだとは思わなかった。果たして、俺は彼がどんな姿でやって来るのか期待しながら待つことになったのである。

 おそらく4年ぶり(?)に出会う彼は、俺の記憶をまったく裏切らない容貌で現われた。その少年のようにスリムなボディーは、このまま学ランを着ても違和感のない若さを保っている。まったく、歳とともに腹が出て困っている俺とは好対照なのである。2年前から住んでいるアパートに招き入れると、俺たちはこれまでのつもる話に花を咲かせた。

 まったくいろいろな話題が飛び出し、すべてをここに再現するわけにはいかないのだが、彼は突然こんな話を始めたのだ。「『オナニーボールペン、オナニーサインペン……』と言っているように聞こえる音声がある」……? その時の俺は、この言葉の意味をつかみかねていた。昔流行った「ボキャブラ天国」の類だろうか、それとも「空耳アワー」のネタなのだろうか……? そのネタの面白さを力説する彼は、俺のPowerBookでYouTubeの動画を検索したりしたのだが、その時はついに見つけることが出来なかった。

 で、その記憶も薄れつつあった昨日のこと。俺はmixi経由で彼からのメールを受け取った。そのメールには、「懸案だった? タモリのオールナイトニッポンの アイスクリームとボールペンのCMの件だけど、 音声が聞けるサイトがわかった。」と書かれている。紹介されたURLをクリックすると、 確かに右下のほうに「韓国CM(1)韓国CM(2)」の表記が。……あとは皆様の耳で確かめていただきたい。
http://www.geocities.jp/tamori_news/(リンクフリーとのことなので、お言葉にあまえさせていただく)

 さて、このアイスとボールペンの衝撃もさることながら、俺はこのページで紹介されている「つぎはぎニュース」の内容に耳を疑った。「大雪」「大相撲」「ボイジャー1号」などと題されたこれらのwmvファイルが、かつて川越東高校写真部で発見された「嘘ニュース(カセットテープ)」とまったく同じ内容であったからである。第12代OBによって発見(?)されたこのカセットテープは写真部関係者の間に一大センセーションを巻き起こし、かくいう俺もこれに影響されて似たようなものを作ってしまうほどの威力を誇ったものだ。

 上述のリンクでお聞きいただければ理解できるのだが、この「嘘ニュース」改め「つぎはぎニュース」のクオリティーはたいへん高い。しかし写真部関係者は、部室から発見されたそのテープを初めて聴いて以来OBの誰かが制作したものだと信じて疑わなかったのだ。何しろそのテープにはラベルなども一切貼られておらず、収録されている音質もたいへん悪かったから。こうしたことが、かえってリアリティーを補強したのである。まさかあのテープがラジオを録音したものだったとは(まあ何にせよラジオの録音ということに変わりはないのだが)……。

 また、川越東高校は1984年の開校であるにもかかわらず、上記のリンクによればこの「つぎはぎ―」が放送されていたのは1980年11月から1981年の1月までという点も謎である。もしこれが初代OBによって録音されたものだったとして、彼は当時12歳ほどだったことになる。果たして小学6年生がオールナイトニッポンをわざわざ録音し、しかもそのコーナーだけを編集することがあるだろうか? こう考えると、OBの兄弟や教員によって持ち込まれた可能性も出てくる。また、このテープ自体がTBSに投稿されたものであった可能性も完全には否定できない。開校22年目にして物議をかもす「嘘ニュース」改め「つぎはぎニュース」。どうやら「写真部用語事典」の内容も書き換えなければならないようだ。この件については今後とも情報を求めていきたい。

 末筆ながら、このリンク先を教えてくださったsy氏に感謝申し上げる。



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