第319回
「週刊アスキー」(株式会社アスキー・刊)を愛読している。自称Macバカ一代の俺にとって、おもにWindowsPCの話題を取り上げている同誌のメイン記事にまったく読むべき部分はないのであるが、その周辺のコラムや漫画が面白くて読んでいるのだ。新製品情報や業界の話題、そして文化人による自らのPC事情などの記事は常識として知っておきたいし、唐沢なをき氏による漫画「電脳なをさん」はつねにMacとApple社に対する風刺に満ちている。読者投稿のコーナーも充実しており、PCにまつわるトラブルやオタクの彼氏や夫をもつ女性たちのコーナーはなかなか読ませてくれる。当初はPCの話題だけで週刊誌を出せるものかと思っていたのだが、つい先日、同誌は累計で1億冊を超えたらしい。出版界の端くれにいる者として、素直に驚嘆せざるを得ないものだ。 さて、今日はその「オタクの彼氏や夫をもつ女性たちのコーナー」、すなわち「週アス女子部」のお話である。毎週毎週、オンラインゲームで知り合ったカップルやパソコンを買いすぎる夫の話などで盛り上がっている本コーナーなのであるが、俺にしてみれば何ともステキな話が並んでいるのだ。やれ家にPCが5台あるだ、一緒に秋葉原へ買い物に行っただという話を読むたびに俺は自らのおかれた状況を振り返る。電気店に5分いるだけで帰りたがる妻を何とかなだめすかしては最新マシンをチェックし、ノートパソコンが高い理由などまったく理解しようとしない妻を説得するのに俺は人生の何日間を費やしてきたことか。それでも何とかPowerMacとPowerBookの2台を維持できているのは、偏に俺の努力とApple社のデザインセンスのおかげである。もし俺がMac党でなかったら、妻はとうの昔に台湾製の真っ赤なフルタワー筐体を不燃ゴミに出していたことだろうし、机上のマザーボードやIntelチップにはお茶でもかけられていたことだろう。世の中にはこうした形でMacの恩恵を受けている人々が数%は存在するはずだ。いや、存在するに違いない。 それにしても不思議なのは、そこに投稿してくる人々の既婚率と子持ち率の高さである。結婚するには紙切れ一枚ですむ(事実、俺にとってはそれ以上でもそれ以下でもなかった)が、子どもまで作るとなれば話は別だ。折しも格差社会が言われている昨今である。子どもには金がかかるということを、誰もがイヤと言うほど思い知っている。しかし、そのコーナーではヲタ夫とヲタ妻が適度にイチャイチャしながら子どもをもち、さらに充実したパソコンライフをエンジョイしていやがるのである。 これも格差社会なのか。これらの投稿からは、安定した収入をもつ男性が年下の女性と結婚し、うまくやっている姿が垣間見える。パソコンという底知れぬ“散財能力”をもつマシンと、日々成長してゆく子どもを両方とも御することのできる財力というのは果たしていかばかりのものなのだろうか。ここをお読みの皆様ならお分かりかと思うが、パソコンというのはたいへん業の深い機械である。少しでも遅くなれば新しいものが必要な気にさせられるし、壊れてしまえば自分の頭脳を喪ったような気になる。どれほどのペースで買い換えるのが一般的なのかは不知だが、個人的は2〜3年に一度は総取り替えで二十数万円の出費をしている。昨今の格差社会の進展によって貯蓄のない世帯数が増加しているという話題があるが、俺もまさにその範疇にある。まったく自慢にもならないことだが、これまで好き勝手に生きてきたことを考えればこれも致し方ないのである。 毎週火曜日。それは俺にとって、ものすごく甲斐性のある男たちの武勇伝を読む日なのだ。皆様にもぜひ一度お読みいただきたいものだと思う。 |