恍惚コラム...

第293回

 「ニート」という言葉に、ずいぶん前から違和感を持ってきた。無業者についてどうこう言うつもりはないのだが、その語感があまりにも小ずるいと思うのだ。元来、日本語というのは外国語を取り入れることにきわめて巧みな言語だ。しかし、いくら何でもこれはないだろうと思う。「ニート」と日本人が発音したら、英語で言うところの【neat】さっぱりした、 きちんとした、 きれい好きな、 均整のとれた……という意味とまったく変わらなくなってしまうではないか。実際の【NEET】とはあまりにもかけ離れたイメージになるのはもちろん、外国の人が聞いたらどう感じるだろう(そもそもNEETとはイギリス生まれの言葉らしいが)。目の前でニートのわが子を嘆く親を、外国人は自分の子を褒めそやす妙なヤツとして理解するかもしれない。それを思うと、俺個人としてはあまり美しくない言葉だと思うのだ。

 また、そんな俺をさらに歯がゆくさせている流行語がある。【LOHAS】―「Lifestyles of Health and Sustainability の頭文字をとった略語で、「健康と地球環境」意識の高いライフスタイルを指しています。(NPO法人ローハスクラブのサイトより)」……これもアメリカ生まれの言葉だそうだが、読者の皆様の耳にもすでに入っていることと思う。これについては何だかもう略す意味がまったく理解できないし、日本語としての語呂が何より悪い。読者の皆様も、ぜひ「ロハスロハスロハス……」と10回ほど口に出して言ってみていただきたい。3文字の言葉の中間に「ハ」が入るこの脱力感。日本語には少ない「ロ」から始まる単語の違和感。最近では電車の中吊りでもよく見かけるのだが、朝から脱力しまくりである。ロハ……そうか。「只」で健康的な暮らしを送るという意味か。それなら納得だ。

 ニートにしろロハスにしろ、いくらでも日本語の訳語が考えられるはずだ。このほか、お役所の文書などにもやたらと横文字が使われている点も理解に苦しむ。そこで今日は、日頃からヘンだと思ってきた横文字を日本語に正してみたいと思う。言葉は単なる記号ではない。日本ならではの漢字に込められた意味を玩味することが、あらゆる事象のより深い理解につながるものと考える。

 ニート→勤労不要者(不要、というのはあたらないかもしれないが、少なくともそれで食べていけているという意味で)
 ロハス→環境親和性生活
 Brics→伯露印中
 e-Gov→電子政府総合受付所(考えてみれば、「インターネット」という言葉の日本語訳はまだないのである。だから「電子」という言葉でごまかすしかないのだ。その点、互聯網という言葉を編み出した中国人はすごい。互いに聯合する網……。)
 B2B→業業取引(Business to Businessの略語ならこれで十分! " " で囲ってググってもヒット無し!)
 B2C→業消取引
 キャバクラ→女性付随型料飲店
 デリヘル→女体単体貸出営業
 イメクラ→状況想起型風俗店
 ヘルス→非挿入風俗店
 ピンサロ→着席式口腔風俗店
 ソープランド→挿入式風俗店
 コスプレ→偽装遊戯
 3P→三人遊戯

 ずいぶん偉そうな事を言った割に、後半はすべて下ネタになってしまった……しかし、この生々しさを感じることもまた大切なのではないだろうか。挿入の可否や店舗の形態など、はじめて遊ぶ人にもとても優しい(?)状態になったとはいえまいか。ともあれ、われわれには知ったつもりになって使っている言葉が多すぎる。こんなくだらない例から、少しでも正しい日本語につなげていければと思うのだ。



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