果たして、川越東高校写真部は審判の日を迎えた。2005年4月16日。放課後の校舎では細長い紙片がやり取りされ、新入生たちはそれぞれの部活動を選び取ったのだ。真新しい白ジャージに身を包んで廊下を行き交う彼らはそれなりの爽やかさで、それなりに希望に満ちているように見えたが、それは写真部OBにはまったく何の感慨ももたらさない。そう。川越東高校写真部はついに新入生2年連続入部「ゼロ」という局面を迎えてしまったのである。
昨日は6名のOBが放課後の部室に参集し、今後の対策について協議した。否、はじめは誰もが新入部員の来室を心待ちにしていたのである。一部は午前10時半から待機し、土曜日の半ドンを有効に生かそうとしていたのだ。にもかかわらず、11時、12時、13時……。時間が経つにつれ敗戦ムードが濃厚になる中、ついにわれわれは14時を迎えてしまったのだ。もちろん結果は「ゼロ」のままで……。
あらためて聞けば、新入生に対する事前入部希望調査において写真部には2名の希望者がいたのだという。しかしふたを開けてみれば何のことはない、上述の結果になってしまったのである。その調査では約400名が運動部を希望し、文化部を希望した者は40名あまりだったとのことなのだが、俺はその数字の根拠を全く理解できないでいる。受験で忙しいから運動部にも文化部にも入りたくないのではなかったのか? 部活動に参加しない自由が認められているのに、あえて拘束時間の長い運動部を選ぶ輩が多いのは何故なのか? そもそも、世の中そんなに運動好きな輩ばかりだったろうか? まあ、これはあくまで事前調査の結果なので詳細は今後の集計結果を待たなければならないのだが、最近の世情とはあまりにもかけ離れた結果に俺は疑問をもっている。
翻って、写真部の行く末の話である。かねてより昨日がデッドラインということは聞かされていたのだが、昨日の顧問および生徒会顧問の先生方との折衝から、以下のロードマップが浮かび上がってきたので報告しよう。結論から言えば、最低あと1か月、うまくすればあと1年の猶予が得られそうな雲行きである。
1)部の合併・廃止は5月中旬の評議委員会で決定される
曰く、生徒会規約第5章第26条は「部の合併・廃止は部員数が5名以下となり評議委員会の認定により決定される(原文ママ)」と規定している。全学年の各クラスから2名ずつ選出される評議員が、生徒総会における予算案などと同時に議案を決定する会を設けるそうなのだが、部活動関連の問題もここで協議されるらしいのだ。ここで特筆すべきは、部活動の廃止・統合にかかわる条文はこの1文しかないという点である。かねてより噂になっていた、「部員ゼロで2年経ったら自動的に廃部」などという規定はないことに注目したい。つまり、その席上において議長が「写真部を廃部にしてよろしいか?」と聞くか、「写真部をもう一年存続させてもよろしいか?」と聞くかによって判断がまったく分かれる可能性があるのだ。部員ゼロの部を何年放置しても、規約上は何の問題もないのである。この評議委員会で平素からどのような形式で議論がなされているかは不知だが、おおかた議長が議案を読み上げ、評議員の挙手で流れ作業的に承認されているのが現実だろう。そこでわれわれは世論に働きかけるべく、来る5月7日を目途に再度の意見広告掲示および配布、そして評議委員会議長あての嘆願書を作成することとした。同日は部室において署名式を行う予定なので、お時間のあるOB諸氏はぜひ参集していただきたい。
以前は規約に明記されていた「新しい部活動・同好会の設立に関する条項」が削除された現在、一度廃部となった部活動をそのままの名前で復活させるのは非常に困難(不可能?)である。もし生徒が揃い、顧問が名乗りを上げても部活動を設立できなくなったこの現実に対してはまったく遺憾というほかない。従来より軽音楽部設立の話などが水面下では持ち上がっているようだが、この制度はそうした芽をも摘んでしまうものである。
2)-1 評議委員会で否決された場合
1)の評議委員会で写真部の存続が否決された場合には、いよいよ他部との統合が開始される。過去にも英語部とESS部の統合が行われたことからも分かるとおり、似通った傾向の部活との統合がなされる見込みだ。実はすでに現写真部顧問のI氏は映画部顧問(兼任)として学校側から任命されており、これがそのまま引き継がれる可能性が高い。学校側としては全ての教員にひとつずつの部活を割り当てる意向があり、部員ゼロの部で遊ばせておくわけにはいかないという現実がある。1)が可決の場合にもこの問題は残されているわけなのだが、この顧問の異動により映画部の顧問は現在部員3名に対し3名になっている。写真部再興に際しては顧問に再任されるのが自然と考えるが如何だろうか。なお、映画部にかぎらず新聞文芸部との統合という可能性もあり、本件については未だ不透明なのが現実だ。
あれだけ広大な敷地と部屋数を誇る川越東高校であるが、昨今では選択制授業の増加により教室不足が問題になっているそうだ。聞くところによれば、最近では生徒会室でも授業が行われているとのことで、写真部部室も教室として接収される可能性がある。これを阻止するためにも、写真を活用できる部活動との統合が望まれている。
2)-2 評議委員会で可決された場合
1)が写真部を現状のまま維持する議決を行った場合、OBはこのまま勧誘活動を継続することとなる。つまり、少なくとも来年5月までの猶予が得られるのである。その際は運動部からの転部者の勧誘を軸に、頻回の広報活動や翔鷺祭でのプロモーション活動が継続されることとなろう。
と、このような状況と相成った川越東高校写真部。あと1か月が正念場となってきた。 |