恍惚コラム...

第267回


 写真部に、審判の日が近づいている。2005年4月8日(金)、川越東高校の大講堂にて行われた部活動紹介。そこではOB有志によるプロモーションビデオが上映され、小社刊の啓発紙「久下スポ」も配布されたはずなのである。自分自身も見届けてはおらず、おそらくこれに参加できたOBも皆無のはずなので実際の状況は不明なのであるが、これらが所期の効果を発揮すればこの春はもうウハウハなはずなのである。これを書いているのは9日なのであるが、さっそくOB数名が部室を開いて新入生の入室を待ち受けているとかいないとか。残念ながら俺自身は午後から仕事なので参上できないのだが、フレッシュかつピュアな新人の登場に期待したいものである。

 さて、先週は上述の「プロモーションビデオ」の件で休載させていただいた。ここからはその撮影の一部始終をレポートしていくことにしよう。

 4月3日(日)。後三条友美氏のクルマで久下戸に乗り付けたのは朝8時過ぎのこと。久下戸の地平線にそそり立つサンクスで食料を調達していると、今回の撮影・監督にあたってくれた「たーお」氏にばったり出会う。高校卒業直後に山梨へ行き、山梨学園大学で山岳部に所属した後、テレビ山梨に勤務。そこでビデオの腕を磨いてきた彼は今春から都内のビデオ制作会社で働いているのである。そこで偶然にも高校での待ち合わせ前に出会った俺たちはしばしの間、再会を祝い合った。俺自身、たーお氏とは昨年暮れに数年ぶりの再会を果たしていたのだが、後三条氏、たーお氏、そして俺が一同に介するのは一体何年ぶりのことだか見当もつかないのである。ともあれ、結束の固い写真部OBのことである。まったく違和感なく打ち合わせを成立させ、一路高校へとクルマを走らせたのであった。

 件のびん沼前駐車場にクルマを停め、機材を降ろしにかかる。ビデオの方は全く分からない俺なのだが、その機材のカッチョ良さにはヤラレた。専用のラックを降ろし、多量のケーブルにうずもれた機材を乗せてゆく。写真の機材も本格的にやればかなりの量になるものだが、ビデオはその比ではない。会社から借り出してきた機材なのだそうだが、やはり実際にそうした仕事に携わっていなければできないこともあるのである。せっかくのプロモビデオだ。思い出は綺麗に残したいではないか。そうこうしているうちに(元?)顧問の伊藤先生も超高級車で乗り付け、いよいよ撮影の開始と相成ったのである。

 部室に残されていた、ありあわせのアイランプでライティングを開始する。その傍らではたーお氏が機材の配線に余念なし。暗幕を閉めると、結構それっぽいスタジオ空間ができあがった。以前よりさまざまな案が出ては立ち消えていたシナリオも、結局拙「写真部関係者に100の質問」から抜粋したものをマジメにインタビューしていくというたーお氏の提案で落ち着いた。ローリングシャッターは写真部の伝統文化であるにしろ、ここはやはり写真部再興を期してマジメなものを作りたいという総意によりこうなったのである。昨年9月から破天荒なシナリオを提案し続けて来た俺なのだが、こういう形態もまたありなのである。あまりに時間がなかったというのも正直なところなのだが……。

 ほどなく米沢氏と片淵氏、そしてすさき氏も参集し、本番開始。「写真部に入っていてよかったと思うことは?」「写真部はヲタクと紙一重だと思いますか?」「あなたに限らず、写真部最高の奇行を教えてください」など、ビミョーかつ核心をついた質問につぎつぎ回答するOB連。超高級プロ仕様モニターにはいかにも報道番組然とした表情が映し出され、時折入る吹奏楽部の楽器の音に悩まされながらも撮影は順調に進んでいった。

 それにしても、同じ質問を複数の人間にするのは楽しいものだ。ありきたりな回答から、マジメに答えているのにどうしても笑いを誘ってしまうものまで。なかでも、遅れて参集したO山氏の回答には何度も撮影を中断させるインパクトがあった。「カップラーメンを、回し、食べ、飲み……」「パシャパシャ撮りましょう」。これらの発言を2〜3回繰り返していたのである。いったいアータはカップラーメンを食べるためだけに写真部にいたのかと問いたい。問いつめたい。実際のビデオでこのシーンが使われたのかどうかは不知だが、とにかくその場が盛り上がったことだけは間違いない。正直、人に言えないことばかりしてきたのが写真部である。当然、数々の展覧会で優秀な成績を残してはきたが、人に言えないことがあまりにも多すぎる。「写真以外の趣味」なんて、写真部OBに答えさせたら危険で危険でしょうがないのである。その毒をどの程度までビデオに反映してよいのか考えながらの撮影となったわけだ。実際、カップラーメンの件もかなりグレーゾーンだしねぇ……。

 昼食にはカツカレー。春休みで合宿を行っている部活のために、日曜にもかかわらず食堂が営業していたのである。その格安でダシの効いたお味を堪能しながら午後の撮影への鋭気を養うOB連なのであった。ふと気づけば福島に行ったはずのべんしゃあ氏も傍らにおり、ますます盛り上がって午後の撮影に入ったことは言うまでもない。

 午前中の暗幕バックに続き、今度は引き伸ばし機をバックに撮影を始めたOB連。ますますヒートアップする撮影に、最初は硬かった表情も軟らかく、自然なものになってきた。で、実際のビデオは3分程度でまとめなければならないにもかかわらず、トータルで30分余りの収録が終わったのは午後3時頃のこと。最後には参加者全員の集合ショットを納め、いかにも爽やかな感じでクランクアップとなったのであった。撮影後には530部も刷った「久下スポ」の折り作業もあり、退出したのは午後4時半頃だったろうか……。

 その後、一部の有志はたーお宅に集い、ビデオの編集作業に立ち会った。iMac & Final cut Expressにつぎつぎとキャプチャーされる映像に一同大笑い。ビデオのタイトルには侃々諤々し、結局「報道特別番組」ということで落ち着いた。結局最後まで居ることはできなかったのだが、編集のために4日を代休にした(!)たーお氏のおかげできっと素晴らしいものが完成したに違いない。早く観てみたいわ〜。

 まあこのような訳で、ひたすら審判の日を待つ俺たちなのである。実際に何日がリミットなのかは不知だが、連休明けくらいまでは何とかなるのだろう。どんな結果が待ち受けているにしろ、これほど広報活動に力を入れた年度はかつてなかった。素晴らしい結果を今から心待ちにしている。

 なお、「久下スポ」のPDF版を付録として置いときますので、ご用とお急ぎでない方はごらんください。↓



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