第262回
足の臭さなどとは無縁だと思っていた俺なのだが、最近とみに自分の足が臭う。否、それだけではない。会社で、自分が使った受話器をしばらくして見ると塩を吹いたような跡がついているし、耳あかは根っからのベタベタ派である。俺自身、昔から脂性だと自認してはいたのだが、どうも最近それが進化しているようなのだ。 このままではいけないということで、出勤と同時に革靴からサンダルに履き替えている近頃の俺なのだが、近頃ではこの時点からしてデススメルを漂わせている。剣道の小手のような、はたまたスキー場の貸しグローブのような、あるいは置き忘れた体操服袋のような……。確かに悪臭には違いないのだが、なぜだか心の奥の記憶を呼び覚ます、そんな臭いにむせぶのである。そして席について仕事を始めるわけだが、ふと足を組んだ瞬間にその臭いは再び襲ってくる。そう。サンダルに履き替えているにもかかわらず、足の裏と靴底の界面で臭いは増殖しているのだ。確かに自分でもそれは感じていて、足の甲はサラサラしているのに、裏はベットリ。純ビニール製のサンダルを履いているのも良くないようで、何だかいつもウェットな感じなのである。靴下の素材によっては足の甲と裏であからさまに色が違って(=湿っているのが分かる)いることもあり、それを見ていると人体の驚異というか、自分の意志とは関係ないところで足が何かを訴えているなぁ、という気がするのである。 しかし、午前中の臭いはまだ可愛いものなのである。午後になり、昼飯に出かけたあとの臭いはさらにマキシマムだ。午前中、サンダルで乾燥させていた足に再び革靴を履かせての外出。そして、エネルギーが充填されたことによる手足の加温(=眠気)がより臭いを助長させるのである。靴下のウェットっぷりはさらに増しており、サンダルに履き替える間もなく会議や取材に入った後にはもうしとどに濡れた足元が待っているのだった。その頃になってサンダルに履き替えることも多いのだが、その生乾きの臭いったらもう……。俺の足は何を訴えようとしているのだろうか!?靴が良くないのか、それとも緊張感がそうさせるのか、はたまた……? これについて、まだ周りの人に指摘されてはいないのだが、そのうちお叱りを受けそうで怖い。この場だからこのような事も書くが、社会生活を送るうえで大きな弊害になっていることは否めないだろう。そういえば、俺の席のはす向かいに座っている同じ歳の彼はたまに足スプレーを吹きかけており、俺も実行してみたいと思ったことはある。しかし、あれをやっていると「俺の足は臭いで〜す!」と宣言しているような気がして後ろめたい気もしてしまう。何だか真似してると思われるのも厭だし。かくして、夏でもないのに狂い咲く俺の足の臭いは放置されたままなのだ。やはり、素直に足スプレーを使うべきなのだろうか。「ファブリーズ」についてはすでに検証済みなのだが、あまり効果はなかったのである……。 ところで、しばしば見かけるのが禿頭のテカリである。全ての人がそうだとは言わないが、中には油でも塗ったのではないかと思うほどつるつるてかてかになっている人も見かける。やはり、人は歳をとるとともに脂っぽくなっていくものなのだろうか。そういう人に限って顔面もかなりギラギラしているものだが、この法則「脂性=ハゲ」が成り立つものだとしたら、俺もうかうかしてはいられない。そういえばくりぃむしちゅーの面々もテレビCMで「脂があると養毛剤が浸透しない云々……」と言っているが、俺もそう遠くない将来には頭皮にまで脂が滲出してゲーハーに……ということもなきにしもあらずだ。まったく、若い頃から老けていると言われてはいたが、自分のカラダがこんな臭いやら分泌物を放つようになるとは思わなかった。「ついにゆく 道とはかねて聞きしかど きのうけふとは思はざりしを」である。あと10年もすれば加齢臭を放つオヤジの仲間入りかと思うと、年相応に進んでゆく自分の身体の不思議を改めて感じるのである。 いやはや、足の臭いの話がこんなに長くなるとは思わなかった。今週は汚い話ばかりで申し訳ないの巻。 |