恍惚コラム...

第255回

 先週の半ばにはすでにこのコラムのネタがひらめいていたのだが、なぜかもう思い出せなくなってしまった。このようなことはしばしばあって、大概は思い出してその通りに書いているのだが、今回はそのネタが絶好のモノだった(ような気がする)だけに惜しい。大体のアウトラインは思い出せるのだが……。まあこんな調子で毎週毎週書き進めている本コラムである。仕事は月刊だがプライベートでは週刊。それを思えば仕事など楽勝? なのである。

 そんなことを考えながら真っ白なテキストエディタの画面を眺めていたのだが、今週はもの凄いトピックが控えていたではないか。何と、幣サイトがこの1月6日で6周年を迎えていたのである。いや、そろそろそんな時期だなとは思っていたのだが忙しさにかまけて確認する気もしなかったのである。これではいけない。早速それっぽい事を書かなければ!そこで、簡単に小社の歴史を振り返ってみよう。

 それは俺がまだ板橋に住む、三文カメラマン助手だった頃に始まった。給湯も暖房もろくにない1Kの木造アパートには不似合いだったPowerMac G3(初代)。それは妻の父親が何かの酔狂で買ってくれたものだったのだが、俺はそのマシンでまだ黎明期にあったインターネットを楽しんでいた。今では信じられないような遅さの外付けモデムが奏でるノイズ。そして使えば使うほど電話代のかさむそのシステムで、俺はささやかながら近未来的な雰囲気に酔いしれていた。今では大分落ち着いた感があるが、当時はネットユーザー=個人ホームページ開設者といった風潮があり、俺もその流れでエクスタシーブックスをネットに流してみるか、と思ったのがこのサイトのはじまりである。

 そう、エクスタシーブックスの源流はもっと以前に遡るのだ。もともとこうした細かい文章を書くのが好きだった俺は高校生時代から「写真部用語事典」や「写真展に出す写真のタイトルのつけ方について」といった小冊子やプリントを出しており、その頃からエクスタシーブックスという商標を使っていたからだ。それも含めれば小社の歴史は13年余りになる。当初は現役高校生だったから、今思えばずいぶん拙い文章を書いていたと思う。だが、あの頃の勢いは今でも大切にしたいと思うのだ。東洋食品ネタやピエールネタ(分かる人だけ分かって下さい)はさすがにもう書けないが、できるだけ気を若く持ち続けたいとは思っている。

 思えば高校生以来ネットに出会うまで、制作のほうもまだ現在ほどの機材やテクノロジーがなかったから家庭用ワープロで打ち出した原稿をそのまま他の紙に切り貼りし、それをコピーして配布していたのだった。いくらコピーとはいえ、自前のコピー機など用意できない俺は常々出版行為の度に1枚10円を自腹で出資せねばならず、財政的な負担も大きくなっていたのだ。そんな最中、個人でほとんど追加投資もなしにサイトを公開できるというネットブームが起きたわけで、俺がその波に乗るのは必然的なことだったといえよう。

 かくして1999年1月6日、幣サイトは産声をあげたのである。それ以来6年間、この場では様々な試みがなされては消えていった。トップページの画像には「史朗フリークス。」「バカメニュー」「仏頭君」「オヴチ君」、そして現行の「ちゅーやん命のブルース」が続き、読者アンケートも数度にわたって行われた。その間にも「写真部用語事典」のアップデートを迎えたり、皆様御存知の「しりとり専用掲示板」は押しも押されぬ(?)人気コーナー(?)に成長した。また、写真部員募集の時期にはポスターを作ってみたり、勧誘用パンフレットの制作にも力を入れてきた。1ヶ月失踪してみたり、1年間ほど旅先から更新してきたのも今ではいい思い出である。さて、読者の皆様はどのコーナーに思い出をお持ちだろうか。

 今回で255回を迎えるこの「恍惚コラム」の文体や内容も、この6年でずいぶん変貌してしまった。もともと高校写真部の新入部員獲得法を指南するコラムの後継として何の考えも無しに始めてしまったのだったが、一度始めると意地になるタイプな俺のことである。むしろ枠に縛られることなく好きなことが書けるというのは幸いなことだったかもしれない。今これを読み直してみると、その当時の世相やら自分を取り巻く状況がよく分かるというものである。住んでいたところ、そのときしていた仕事、気候や心境などがよく伝わってくる。あえて書いた日を入れていないこのコラムなのだが、本人からすれば大体いつ頃のものなのかはよく分かるのである。それを読者の皆さんがどう思うかもとても大事なことだが、誰もが見ている中で自分の日記をつけているような「見られる快感」がここにはあると思う。個人サイトにはつねにつきまとう問題だが、人間は所詮身の回りに起きたことしか書くことはできないのである。それを何千何万という人が同時に行っているインターネットの世界の中で、自分がどのような特色を打ち出していくか。まだその答えは出ていないが、そうした意識をもちながら毎週末を過ごすことは必ずや自分の生き方にいい影響を与えると思っているし、読者の皆さんが俺の戯言に耳を傾けることを無駄にしてはいけないと思って書き続けている。

 小社の歴史、と言いながら書き始めたのだが、あいかわらずとりとめのない内容になってしまった。ちょうど年頭にあたるのでもう少し気の利いたことをと思ったのだが、書く人間は一緒なので致し方ないのである。6周年を迎えた幣サイト。ご縁のある限り、見守って頂きたい所存であります。



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