気づけば本日で今年の更新も最後なのである。……と書いてから、このサイトにある恍惚コラムの過去ログを読み返してみたのだが、一昨年に書いた文章も同じ書き出しであった。つまり、そんなものなのである。毎年毎年、一応新しい気分で新年を迎えてはみるのだが、春が過ぎ、秋が過ぎればそんな気持ちは忘れてしまう。毎年毎年、誰にでも新しいトピックは生まれているのだが、結局年の瀬に思うことが同じなのはどうしたことだろう。「気づけば……」
今年の正月はカンボジアの首都プノンペンで迎えた。旧正月を祝うかの国に、元旦だからという特別の感慨はない。東南アジア特有のぬるい風と毎日の喧噪の中、俺はまだ帰国後に何をしているかなど考えている余裕はなかった。
今年の2月はタイにいた。1年間の旅のしめくくりにこの地を選んだのは、やはり俺たちが旅してきた中ではもっとも発展しているところで、日本に帰ってからの服装やらみやげを選びやすいという事情があった。俺たちは最後の1週間をバンコクで過ごし、GUESSのバーゲンで服を買ったり、タイ東急で買い物をしたりして一日も早い真人間への復活を誓った。
2月17日に帰国。1年ぶりに入る日本のコンビニに酔いしれ、いつ、どこのチャンネルに合わせても日本語があふれ出すメディアに陶酔した。本屋に行けば、あいかわらず同じ連載を続ける漫画誌を見て感動し、微妙に顔ぶれが変わっているアイドルたちに時の流れを感じた。
3月。帰国直後から続けていた就職活動を本格化。どの職種に就くか決めかねていたものの、妻の後押しもあってかねてから志望していた出版業界を志す。しかしギリギリの年齢とこれまでの経歴が邪魔をして、書類ばかりが戻ってくる日々を過ごす。月末に呼ばれた出版社に入社するなど、当時は知るよしもなかった。
4月12日。15社あまりに応募して、ようやくある出版社に入社。歯学書専門の出版社はこれまでに見てきた会社とはまったく違う雰囲気だ。業界紙の編集部に配属となるも、最初の2週間ほどは人手不足でほとんど放置状態。違うフロアでひたすら雑務をこなす。
5月。入社直後の連休でいきなりだらけ気味。仕事を早く覚えたいと思うも、まだ休日出勤するほどの仕事を任されているわけでもなく悶々とする。また、慣れないQuarkXPressと格闘。あんなに直感的に操作できるソフトなのに、いざ出版の現場で使うとなると苦戦。
6月。次第に取材などに出るようになってきた。例の日本歯科医師会やら日本歯科医師連盟の贈収賄事件の余波が続き、仕事内容はその記事作成など。また、この頃からメーカーとの関係も強化され、スポンサー付き座談会の収録などに携わる。
7月。今年の夏は暑かった。今までしてきた仕事は外回りが基本だったが、今や室内での仕事ばかりなので知れたものである。しかし、このころは毎朝の冷たい缶コーヒーを日課にしていたから、カラダにはかなり悪かったはず。それにしても、気張っていたせいか恒例の夏カゼにかからなかったのは幸いといえよう。入社直後にもかかわらずボーナスをちょっとだけ拝受したのだが、これが俺史上最高額。自分が今までどれだけの世界にいたのかを思い知ると同時に、ものすごく複雑な気分になった。
8月。休みには何をしていたのか全く覚えていない。ただ忘れられないのは、お盆休み最終日にねじ込んだ座談会の収録だ。熊本と宇都宮と東京の先生を無理矢理ブッキングして不評を買ったのは忘れられないが、人が揃わなければはじまらないのが座談会である。ものすごい気苦労だった。
9月。仕事のこともさることながら、この月は何といっても翔鷺祭がメインイベントだ。休部していたのは承知のうえだったが、やはり展示のない部室に行くのは複雑なものである。伊藤=P=浦人氏と休部の要因について意見を交換した。また、個人的に新聞を作り配布した。
10月。すっかり日々の生活も板についてきた頃だ。4月に引っ越したアパートにもすっかり生活臭が染みつき、夏物のスーツを取り替えたらなんだかずっと昔からここに住んでいたような気がする秋。猛暑は影を潜めたが、けっこう暖かい日が多かった気がする。
11月。仕事は来年の企画で持ちきり。あんな紙幅の少ない新聞にも綿密な計画が必要なのだと思い知る。方々に電話をかけ、企画書を書きまくる日々だった。これですんなり決まってくれればいいのだが、なかなか原稿を書けそうな、書いてくれそうな医者にはぶつからない。編集長のダメ出しもこのころピークに達した。漫画に出てくる編集者みたいだな……と思わず納得だ。
12月。月初めからいきなり同じ部署の1人が「粛清」される。その残務処理と自分の担当を同時に進行しなければならず、大スペクタクルに遭遇。連日キレまくる編集長と社長、そして粛清にあった人を見ながら「明日は我が身」と大いに緊張する。まあその人はかなり、というか相当いいかげんな仕事ぶりだったのだが……。またボーナスも支給されたが、俺達夫婦の国民年金未納分が相当額にのぼることが判明し、その殆どを費やした。コンビニのレジに札束を持ち込む快感は後にも先にもないだろう。
と、いった感じで今年も暮れてゆくのである。このような些事の積み重ねが人生。あと何年続くか分かりませぬが、本年もご愛読ありがとうございました。それでは皆様、よいお年を……。
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