先週、低周波治療器を買った話をした。おかげでメジャー級だった俺の肩もずいぶん快調だ。世界を救う肩こり発電プロジェクトも中止に追い込まれそうな勢いである。肩が凝る日にはもう朝起きた瞬間から予兆があるのが常なのだが、そういうときに予防的に使うとかなりの確率で本震を回避できることが分かったからである。あの、肩の筋周辺にヤバイ電圧が流れ始めている感じを掴む寝覚め。すると俺は即座にあのピクピクを肩に当て、何とか日々をしのいでいるのである。たかだか3千円ほどでこの効果が得られるのに、なぜ今まで買わなかったのだろうかと後悔することしきりである。
高校生くらいの時分に、どこから手に入れたかは知らないがそれは実家に置いてあって、当時若かった俺は何となくそれで遊んでいた。「陰部には使用しないで下さい」という何とも不可解な注意書きを読みながら、「こんなもの、余計に肩が凝るじゃないか」と思っていたあの頃。実際に陰部に当てる勇気はなかったが、その周辺に当てて刺激を楽しんでいたあの頃。当時は現在に至るこの肩こりを予想だにしていなかったのだ。全く無邪気なものである。肩を揉まれて、ただくすぐったいと思ううちは子供である。自分で親の誕生日に「肩たたき券」を発行していながら、それがどのような恩恵をもたらすかは理解していなかったのである。思えば今まで、さまざまな人の肩を揉んできた。父に母に、職場の上司に。しかし、相手の肩こりを理解しながら揉んでいたことが果たしてどのくらいあっただろうか。知らぬ間に、適当な揉み方になってはいなかっただろうか。この類の話はいくらでも広がってゆくだろう。肩こりはかくも人を反省させ、育てるものなのである。
話はそれてしまったが、俺はそんな低周波治療器を忘れて10年あまりの時を過ごしてきた。その間に俺はずいぶん歳をとり、人の肩こりも理解できるようになってきた。そして俺は、進む肩こりに対してさまざまな対策をとってきた―貼り薬、温熱療法、マッサージなど―。しかし、これぞという効果のあるものには出会えなかったのである。1箱数千円もするような貼り薬にはブランド間の相違が全く感じられなかったし、塗り薬も一瞬の清涼感だけで過ぎてしまう(タイガーバームだけは効果的だと感じるのだが、あの匂いは承服できない)。肩を温めるパッドのようなものも使ったことがあるが、いちいち電子レンジで温めなければならないそれは携帯性に欠けていた。自己流のマッサージも、かえって二の腕のこりに移行するだけのものだった。
で、俺は思い出したのである。高校生の時に見た低周波治療器を―あの2つの電極が発する電気刺激。自分で動かすことなく、肩が腕が勝手に収縮してくれる魅惑の機械。出会った頃はバカにしていたが、ここまで来るとそれに頼るしかないかと思い出したのである。かくて俺は電気店に通い、さまざまな機種を比較・検討したのである。パッドが暖まるものや、電極が4つ付いたもの。デジタル表示で施術時間が表示されるもの…結局俺はビックカメラで見た最も安い物を買った訳なのだが、高校生の時に受けた印象とは180度違うのだ。当時は痛かっただけの電気刺激が、今では快感に変わっていたのである。今やとても陰部に当てる気にはならない(説明書にはやはり『首から上や陰部に使用しないで下さい』と書いてあるのだが)。その恩恵をただただ心静かに感じ取るだけである。これさえあれば俺は24時間365日マッサージ師を雇ったのも同じ事である。素晴らしい。素晴らしき哉低周波治療器。
われながら低周波治療器にこんな字数を使うことになるとは思わなかったのだが、とにかく素晴らしいので筆が走ってしまった。今まで巷間に、低周波治療器をここまで讃えた文章があっただろうか。俺はこの文章を通じて皆様に低周波治療器の素晴らしさを伝えていきたいと思う。そしてあわよくばメーカーの皆様にも読んで頂き、この功績をたたえてもっと高級な低周波治療器をプレゼントして欲しい。
そんなわけで、肩こりでお悩みの皆様にはぜひこの世界に浸ってみることをおすすめする。刺激が強いので万人向けとは言えないかもしれないが、価格もさほどではないのでものは試しである。すっかり宣伝になってしまったなぁ…。
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