恍惚コラム...

第242回

 Webページに人名やキーワードを書けばすぐにGoogleに発見されてしまう昨今である。俺なんぞがインターネットを始めた98年頃には「いかにしてYahoo!に登録してもらうか?」について誰もが血道をあげていたものだが、時代は全く変わってしまったものである。この不良サイト「Ecstasy Books」はついにYahoo!に登載されることはなかったのだが、今では様々な皆様がそれぞれの検索ワードでここにたどり着いて下さっている。
 
 そんな中、川越東高校写真部の公式掲示板にこんな投稿があった。
 「写真部用語辞典にあったA日S一郎って・・・俺の学校にいるんだけど・・・そいつかな?」
 
 全く世の中は狭いものである。Yahoo!に足蹴にされたこのサイトの内容を見て、某県の学生さんが書き込みをしてくれたのである。カワイイものではないか。自分の学校の先生の名前をわざわざネットで検索するなんて…。その先生はは俺の高校在学中に転任してしまい、それ以来行方知れずになっていたのでこういう書き込みは嬉しい。で、俺はこういうレスを返したのだった。
 
 「いずれにしろ、本人と鑑定するにはもう少しの証拠が必要です。1)写真を撮っていただき、当方に送付する。2)「川越東高校」「写真部」などのキーワードをささやき、反応を確かめる。」
 
 すると、ほどなくこんなレスが返ってきた。
 
 「A日S一郎知ってます。今、うちの学校で英語担当で来てます。寝てると机バンバン叩いて来て、うざいっす。生徒からは、一味変わった感じで見られてます。以前に、生徒に自分の事を日記にされネットで公開されていたという事を話してましたよ。」
 
 ひと味変わった感じ…。その瞬間に俺は確信した。類い希な珍名。担当教科は英語。そして、俺の高校時代にも醸し出していた「ひと味変わった感じ」。間違いない。川越東高校から鹿島のある高校に赴任した彼は今、ある県の中学校にいる…。それにしてもいかがなものだろうか。中学生にネット上でこんな言われ方をするというのは…。ていうか、中学生なのに授業中に寝るとは大した度胸だ。そして同じ日の夕方、別の生徒からこんな書き込みがあった。
 
 「A日!A日!A日!A日!womenウィミィン最高だ!!このような妙な発音がうける。」
 
 それは妙な発音ではないのだと俺は思う。ウィメンと読まずにウィミィンと読む。それこそが彼が長い海外生活で培ってきた正しい発音なのである。中学生諸君にその真価を理解しろと言うのは難しいかもしれないが。そして書き込みはなおも続く。
 
 「様子をみたらどうやら本人らしい・・・Ψ(`∀´)Ψケケケ○○中のやつがどんどん来てる・・」
 
 だんだん事が大きくなり、俺は焦り始めた。他人様の掲示板で、俺の書いた文言が波紋を広げているのだ。しかもその中傷(?)の対象は高校時代の恩師で、煽っているのは中学生なのである。こんな経験はネット歴6年にして初めてである。今さら言うのもなんだが、最近の小中学生のネット上での振る舞いは危なっかしい。その先生の本名は晒しっぱなしだし、学校名までモロバレ。こちらも負けじと検索をかけてみたら、その略称に該当する中学校はおそらく日本に2校しかないのだ。そういうリスクを覚悟の上での書き込みなのだろうかと疑問に思っていると、また新たな書き込みが。
 
 「コラコラ、本名を挙げるのやめなさい(笑(中略)○○中軍団もいいかげんにせぃっ!わざわざ掲示板立てたの?ウィミンネタを使ったってことは・・・アソコのクラスだなぁ?って、今日、例のトコを印刷してきたヤツがいたりしておもしろかったけど。で、若林君、紳士的対応をお願いします。そっとしといてね。」
 

 真打ち登場である。間違いなくこれは先生本人の投稿だ。それにしても、こんな形でネット上で再会するとは思わなかった…。かれこれ10年ほど経ちますね。お元気でしょうか。いろいろあったけど、わたしは元気です。でも、もう少し生徒達にネットの使い方を啓発しとかないともっと酷いことになりますぜ…。中学生時代って、もう何でもかんでも言いたい放題ですからねぇ。俺の中学時代にはインターネットなんて夢のまた夢、一部のマニアがひっそりとBBSに接続していたくらいで、それにしても現在のような情報網の広がりは望むべくもなかったわけです。それが今では小学生でも中学生でも自前のホームページを持ち、掲示板も簡単に立ち上げられるようになってしまったからもう大変。ネット上にあふれ出す青臭いエナジー。俺は全然嫌いではないのですが、野放しにするのはやはり危険だと思います。ネチケットという言葉をご自身も使われていましたが、やはり、ちょっと書いただけで検索に引っかかってしまうご時世ですから、余程のことではないかぎり本名や学校名を晒すのは危険であることを教えておかれた方が良いと思うのです。多分俺の中学生時代にネットがあったらもう、それはそれは大変な事になっていたでしょう。実名晒し上等の猥褻上等のねぇ…。中学生諸君はもうちょっとsage進行でやった方がいいと思うぞ。自分で自分の首を絞めかねないし。
 
 すっかり文体が変わってしまったのだが、改めてネットの狭さ、そして個人情報流出の危険性を実感した出来事であった。写真部用語事典のなかには実名で記されている部分も多いのであるが、これを機に見直す必要もあるかもしれない。実際、過去にも指摘を受けて内容を変更したこともあるので、改めて関係の皆様には再見していただき、自分に不利と思われる点は指摘していただきたいと思うのである。


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