第191回

 雨の日曜日。ただそれだけでもおセンチ気分なのに、朝イチでの歯医者の予約は入ってるし、おまけに妻は午後に一緒に出かけろと命じてくる。その勅命は先週の中ごろに下ったものだったのだが、もうそのおかげで今週後半はずっと心に暗雲がたれこめていた俺だったのだ。このように日曜に2つもの用事が入ってしまうと、いきおいこのサイトの更新作業に支障を来すのである。このコラムには2時間かかるし、ちゅーやんには1時間かかる。それからその他もろもろのコーナーを仕上げるためにはやはり最低4時間もの時間が必要になってしまうのだ。日曜の朝だからといって、学生のころの俺は平気で昼過ぎまで寝ていたものだが、このサイトに携わるようになってからはまったく違うのだ。最悪でも9時には起きて、ストイックな更新作業にいそしむのがここ3年余りの俺の習慣なのだ。ま、これが好きでやっているのだから致し方ないのだけれども。
 
 しかし、である。ついにかねてからの懸案だったモバイル執筆環境を手に入れた俺なのである。先々週、このサイトの何処かにも書いたが型落ちのパワーブックG4/667を新品とは思えない激安価格で購入。その後はOSX(オーエス・テン)の使いづらさに狼狽したりトラックパッドの隔靴掻痒さ加減にブチ切れたりしたこの2週間だったわけなのだが、ようやく持ち前のMac愛と根性とフェチ魂でこれをねじ伏せ、この激浅のキーボードにおけるタッチタイピングを可能にしたというわけなのだ。と、いうわけでこの稿は歯医者の待合室で書き始めたわけ。

 いやー、いいですよパワーブック。(と書いた所までで診療室へ。今日に限って待ち時間が短かったのだ・・・。いつもは1時間くらい待たせるくせに)

 (で、自宅のテーブルの上にて)「チタン」という部分がカメラフェチ魂をもそそってくれるし、幅はあるけど厚みはわずか1インチ。薄すぎてどうにかなるんじゃないかというくらい薄い。液晶なんかはぶつけたらパキっと逝きそう。とても「ブック」とは呼べない厚さと重みから始まったパワーブックの歴史だけれど、ここにきてようやく真の「ブック」を名乗れるようになったのではないかと思う。そういえば昔、この種のコンピュータは「ラップトップ」と言われていたっけ。「膝の上コンピュータ」。取っ手が付いていて、重さも5キロ以上あって、バッテリーも1時間程度しかもたないこの種のコンピュータはとても膝の上で利用できるようなシロモノではなく、「ラップクラッシャー」(膝砕き)と揶揄されていたあの頃が懐かしい。このように持ち歩いて使うのではなく、移動可能なデスクトップマシンとして考えるのならば納得できたが、とても「モバイル」「ユビキタス」な概念とはかけ離れたものだったのだ。まあ、もともとがどこにでもクルマで行くアメリカ人の産物。電車や乗り合いバスでちまちま移動する日本人の事なんざちっとも考えられてはいなかったわけだ。で、21世紀2年目の今日、俺の手元にこんなエレガントなマッシーンがあるという事に関してはもはや感慨一入なのである。バッテリーは2時間半以上持つし、1280×854ピクセルの液晶なんて10年前にしてみれば狂気の沙汰だ。それにしてもこれとてまだまだ過渡期の製品。タブレットPCなるものも出始めたところだし、モバイル環境での生命線たるバッテリーについてもこれから燃料電池が実用化されて平気で7,8時間使い続けられるものが出てくるのだろう。パソコンの買い時は「欲しい時」としか言えないとはいえ、新品のパソコンを買った時にはなぜかそうした未来の情報に敏感になってしまう。

 で、この文章をお読みになっている皆さまは殆どがこのサイトをウィンドウズPCの画面でご覧になっている事と思うのだが、このパワーブックに標準搭載されている「MacOSX」。これがまたものすごく未来的というかサイバーというかアヴァンギャルドなヤツなのである。昨年の夏以来様々な媒体に取り上げられているOSなので皆さまご承知の事と思うのだが、俺個人的にはこのパワーブックを買うまで導入をためらってきたのだ。まず第一に旧来のOSとの互換性がイマイチだったことが挙げられる。旧OS用に書かれたプログラムはOSX内のエミュレーターで動作するとは言え、所詮エミュレータの枠の中で動くので何だかキモチ悪かったし、そのエミュレーターの起動に時間がかかるのでとても快適とは呼べなかったのだ。また、OSX自体がまだまだ開発されたばかりで速度の面で旧OSの方が勝っているということもあった。それからどのOSをお使いの方にも思い当たるかと思うが、OSのアップデートは常にマシンのスペックアップをも要求するものだ。ウィンドウズMeがバンドルされていたマシンにそのまま同XPをインストールしても何だか力不足を感じるのと同様に、俺の第一夫人「G4Cube/450」にOSXは荷が重いと思ったのだ。で、俺は今の今までOS9を地味に使い続けてきたのであった。しかし、そんなネガティヴな印象があったOSXを半ば強制的に使わされるに至り、そしてOSXの最新バージョン「10.2.2」を導入してみて、俺は「案外イケるかも」という印象を受けたわけだ。
 
 外観のクールさは当然のこととして、(ちなみに俺は会社のXPマシンのアピアランスは「Windows Classic」にしている。あの「Luna」デザインは心臓に悪い、というかローカルネタで恐縮ながら「埼玉栄高校」を思い出す。あのオレンジが・・・。)俺が分かりやすい部分ですぐに実感できたのがすべての画面表示で完全にラスタライズされたスクリーンフォントの美しさだ。OSXにはOCFフォントの「ヒラギノ」書体が標準でバンドルされているのだが、この文字が非常に美しい。俺は今これをOSXの「EGWORD12」で書いているのだが、まるで企業のプレスリリースPDFを見ているかのような美しさ。また、どんなWebページを見てもテキストが大体ラスタライズされた状態で表示されるので、思わずテキストではなくGIF画像なのではないかと思わされてしまう程だ。この文字環境に出会ってしまうと、旧MacOSを含めた他のOSが何だかチープに見えてきてしまうから怖い。また、旧来のMacOSで悪名の高かった「爆弾マーク」も、OSXになってから一度もお目にかかっていない。(と、いうよりもそのアイコン自体が存在するのかどうか知りたいものだ)昨今テレビで放映されているアップル社の「Switch」キャンペーンは少々鼻につく(?)かも知れないが、あのテンションの高い物言いもあながち嘘ではないのである。卑近な例で見ると、エロサイトなどでしばしば経験する無限ウィンドウ地獄。他のOSだとシステム全体を巻き込んでフリーズしてしまう場合が多いのだが、OSXではそのフリーズするまでの余裕が違うような気がするし、もしIEだけを強制終了しなければならなくなった場合にもOS自体は何事もなかったかのように動作しているのだ。これは本当に凄い事だ。しかも強制終了のダイアログに「システムに影響はありません」と明記されている!某XPのように「ご迷惑をお掛けしております」と謝るばかりのOSとは訳が違う。XPも一応は「落ちない」OSという事になってはいるのだが、結局電源ボタン長押しで切らねばならない場面に遭遇するのはどういう事だろう?

 ・・・まあマカーの性として、結局はMac賛歌を長々と語ってしまったわけなのだが、まぁ結局道具っすからね、どれを使っても一緒。つーか、モバイルするんならバイ夫とかの方がよっぽどいいんじゃないかという外野の声もよく聞こえるんですけどね。ええ。でも、好きなんだから仕方ないんだよねぇ・・・。エミュレータでいいのが出来れば考えなくもないんだけどねぇ・・・。そんなわけで、これからは外で書く機会も増えそうなので文体の違いを要チェック、ですな・・・。



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