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第188回

 

CEOのカメラ思い出話
(17)「俺のじゃないカメラ達・パート8」の巻

 今回はやる気の見られないレビュー2本。大味なる大判カメラの世界・・・。

・トヨフィールド4×5
 4×5と聞いて、すぐに何のことだか分かる方は相当なカメラマニアだろうと思われる・・・少し前にも似ような振りで書き始めたことがあったけれど、4×5というのは今までに紹介してきた「中判カメラ」よりも大きいフィルム・4×5インチのシートフィルムを使用する、普通のマニアではまず触れることのないであろう、まさにプロのためのカメラである。皆様もドラマやら写真館やらで何だかでかい蛇腹の付いたカメラを御覧になったことがあるかと思うが、4×5とはまさにそういうカメラなのである。つまり、前板と後板、その間を蛇腹がつないでいるだけ・・・。それだけでカメラとして機能しているのを不思議に思う皆様も居るかとは思うが、カメラなんて案外簡単に出来てしまうものなのである。

 しかし構造が簡単なだけにその扱いはなかなかに厄介だ。露出計もなければフィルムの自動給送もない(何しろシート(単片の)フィルムだから)ものだから、シャッターを切るたびにそのシャッターを手動で戻してやらなければならない(コッキングという)し、フィルムにしても一枚ごとに大きなホルダーを取り替えてやらなければならない。しかもそのホルダーには「撮影済みですよ」という表示すらないので2重撮影が頻発する・・・そして象徴的なのはあの布を被ってピント合わせをする光景。あれはあのようにしないと周りの光の影響でピントグラスが見えなくなるからああするのである。では何でそんな不便なカメラがデジカメ全盛の21世紀に生き長らえているのかと言えば、その大きなフィルム面がもたらす高画質と「アオリ機構」の充実に尽きる。今までに何度も「ネガは大きい方が有利だ」という話をしてきたが、この4×5はもう10センチ×12センチ(約)。中判なぞとは桁違いの大きさでとんでもない大伸ばしを可能にする。また「アオリ機構」というのは少々耳慣れない言葉かも知れないが、これは「カメラのレンズはフィルム面に対して平行でありかつ垂直である」という大前提をあえて崩して様々な効果を得られるという機構なのである。あの蛇腹をもってすればそうした移動はお手のもの。詳しい説明は割愛するが、やたら奥深くまでピントの合った風景写真や、やたら線が真っすぐ写っている建築写真はこの「アオリ機構」なしには実現できないのである。そういった事情で今でも一部の分野ではこの種のカメラが繁用されるのだ。

 さて、俺はそんな大仰な4×5カメラを数台使ったことがある。とはいっても所有したものは1台もなく、全て大学時代に貸与されたものばかりなのであるが、俺個人的に言うとどれも大味で、所有欲をそそるモノはあまりなかった。で、このトヨフィールドというカメラも大学で貸し出されたのだが、ただ淡々と課題を撮る、そんな用途にしか使わなかったのである。
 
 大阪府は豊中市に本社を構える「酒井特殊カメラ製作所」製のこのカメラはまさに質実剛健、価格も同じクラスのドイツ製(リンホフとか・・・)に比べれば半額以下で、同級生の中には喜んで買う者も居たのだが、やはり俺の写真は4×5で三脚据えて・・・という雰囲気ではなかったので何となく冷ややかな視線で見てしまっていたのは残念なことだ。しかし各部のダイヤルの作りとか、レール(前板を前後させるための溝ですな)の堅牢さなどにはかなりの信頼感があり、「別にドイツ製じゃなくてもいいぢゃん」と思わせてくれた部分では素晴らしいものがあったように思う。しかし先にも書いたがこの種のカメラは構造が至極簡単なため、画質は選ぶレンズによってしか影響されないという罠がある。つまりリンホフ使おうがジナー使おうがタチハラ使おうが、レンズに安いものを使えばそれなりになってしまうしその逆もまた真なり(この種のカメラではボディーによらず各社のレンズを自由に選択できるのだ)と、まあそんな世界だから4×5のボディーにこだわりを持っている人種というのはかなりレアなのだと思う。何だか全くこだわりの感じられない文章になってしまったけれど、まあこんな大味なカメラの世界がある事を知っておいて損はないかと思う。大味でない4×5の話はまた来週に。
 
・トヨビュー4×5
 さて、今度は同じ「酒井特殊カメラ製作所」の「ビュー」の話である。ここでまず明らかにしておかなければならないのは「フィールド」と「ビュー」の違いなのであるが、これは前者が「ロケ用」、後者が「スタジオ用」という意味で差し支えないかと思う。フィールドカメラというのは巨大な弁当箱のような外観を持ち、その蓋を開く事によって蓋の裏に仕込まれたレールが出てきて、その上を蛇腹付きの前板が進んでいって蛇腹を展開し、ピント合わせやアオリが出来るようになるというスタイル。これに対してビューカメラというのは折り畳みが出来ず、アルミ製のレールがまずあって、その前後に「枠」があってその間に蛇腹を通すと言う格好になっている。想像していただければすぐにお分かり頂けるかと思うが、アオリやマクロ(接写・拡大という意味ですな)撮影の自由度はビューカメラの方が圧倒的に高い。それがスタジオ用と言われる所以なのである。まあ土門拳でもないかぎりビューをロケで使おうなどとは思わないものなんだけれども・・・。
 
 で、このカメラを俺はこれまた大学の授業で使わされたものだ。タングステンライトに照らされた石膏のオブジェやらパンやらの写真を必死こいて撮ったのだけれど、いや~、このカメラにもさして思い出がないなぁ・・・。ニッコール付けて、まさに「道具」としてのおつきあい。ただそれだけ。でも大学の倉庫にアルミケース入りのこのカメラが20数台もある光景は写真学生の夢をくすぐってくれましたな。「いつかはこんなカメラでスゴイ写真を撮っちゃうぞ~」なんてな。でもプロになった友人もほとんど仕事で4×5なぞは使った事がないと言うし、何だかなぁ・・・。しかも大学のトヨビュー、20年近く使われててかなりガタも来てたしなぁ・・・。そんな雰囲気もあってか、俺は4×5というといつも江古田の冬の日を思い出すのである。地下の暗室でフィルムを現像し、伸ばし終わるといつも夕方。覚えはじめのジタンの後味を口に含みながら、薄く仕上がったネガに苦笑する日々。それからリバーサルの授業では段階露光をさせられたんだけど、俺は金がなかったので3枚撮っても1枚しか現像に出せなかったのだった・・・。それでもいつも大体適正露出だったのだから結果オーライだろう。1枚300円前後してたからね。4×5のリバーサルの現像。
 
 まあそんな感じで、趣味で4×5を使い込んだ事がないものだから文章が薄くなってしまい申し訳ないっす・・・。
 
 

(来週につづく)



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