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第182回

 

CEOのカメラ思い出話
(11)「俺のじゃないカメラ達・パート2」の巻

 今週はニコン3連発・・・。これを書くにあたって同社のサイトを見たんだけど、「一眼レフカメラ(フィルム用)」という表記に激しい違和感を覚えたわさ。フィルム用・・・。それって「引き伸ばし機(印画紙用)」って言ってるようなものなのでは・・・。ことほど左様にデジタルが流行る時代。そんな時代だからこそ敢えて、もう暫く銀塩カメラの話に浸って戴こう・・・。

・ニコンFM2
 これはまあ正確に言えば「NewFM2」と呼ぶべきなのだが、キヤノンのNewF-1の「New」がいつの間にか取れてしまったように、このカメラに「New」とか「Old」を付けて呼ぶ人を俺は見た事がない。まあ俺にとってそんな事はどうでも良いのである。(真性ニコンマニアの方にはお叱りを受けそうだが)

 と言うのも、このカメラは妻が大学入学と同時に新品で買ったもので、俺は殆ど使った事はないのだ。しかし俺は19の頃から彼女(現・妻)と行動を共にしているから必然的に、事あるごとにその姿を見、またシャッター音を聴かされてきたわけで、そういう意味では俺の思い出のカメラとして語るべきカメラなのだと思う訳だ。

 皆様ご承知の通り、俺達は日本大学の芸術学部・写真学科で知り合ったわけなのだけれど、妻をはじめとしてそこに入学するのにカメラがない、という人種が意外なほど存在していたのである。みんながみんな高校写真部上がりで気合いの入ったカメラを持っているという訳ではないと言ったら皆様は意外に感じるだろう。しかし現実とはそんなものなのだ。逆にカメラ本体に偏愛を持っていない方が写真は上手くなるという印象もあることだし。

 で、このニコンNewFM2は大学側の指定機種だったわけなのである。事実上、初心者コースの学生で手持ちのカメラがない連中は殆ど予備知識も与えられずにこれを買わされたのだ。当時(今もか)猛烈なカメラマニアだった俺はその地味な機種選択に激しく憤りを覚えたものだ。今やプロでさえAF/AEを使う時代になぜこのようなアナクロなカメラを買わせるのだろうかと。まあ確かに価格も安く、写真の基礎を学ぶのには好適なカメラだという点について異論を挟む余地はないのだが、もう何種類かのカメラの中から選ばせる度量の広さが欲しかった。しかしそれよりも、そうした点に何の疑問を持たずにNewFM2をホイホイと盲目的に買う連中が跋扈する結果になった事が俺にとって最大の驚きであった。5月のキャンパスにNewFM2のシルバーボディーを何台も見かける所沢。まさにテイストレスだ。せっかく芸術学部という世捨て人の集団の中に入ったのにそんな横並び意識でどうするのか。

 まあ妻もご多分に漏れずそのテイストレスなカメラのオーナーになってしまったわけで、しかも俺はそんな女性を妻にしてしまったわけでもう何の言い訳も出来ないのであるが、このFM2。故障もせずに2年間は肌身離さず持ち歩かれていたのだがそのうちにEOSが欲しいと言いだしてアッサリニコン党から脱退。俺が新宿の「ミヤマ商会」で見つけたEOS-1(中古)に速攻で浮気。FM2には50ミリ1本しか付けていなかったのにEOSには広角からマクロまで3本のレンズを揃えてしまったのだから女というのは、そして非カメラマニアというのは怖い。野郎だったら順当にF3かF4を買って、ニコンFマウントを生かしつつサブカメラへの道を行かせるのが普通だろうに。

 そんなわけでウチの押し入れにはまだマウントが処女同然のFM2が、巻き戻しレバーのツマミが取れた状態のまま眠っている。金のない時に何度も売却されかかったのだが、妻の強硬な反対によりそれは免れている・・・。しかしどんな状態でも動ける(前に述べたメカニカルカメラなので)そのカメラが自分の家の押し入れに入っているという安心感は何だか「引き出せないけれど自分名義の小金の口座がある」ような気がして、結構悪くない。

・ニコンFE2
 一部マニアに礼賛されるこのカメラ。現在では新品で「ニコンFM3A」なるほぼ同等のカメラが入手出来るのだが、この3Aが出るまでの数年間、このカテゴリー(サイズや「格」の問題において)の絞り優先AE搭載マニュアルフォーカスカメラというのが存在しなかったから、一時は中古なのにも関わらず新品並みの価格で取引されたりしたという恐ろしいカメラなのだ。今中古でどのくらいで買えるのかは不知だが・・・。

 で、知らないとは恐ろしいものでこのカメラを貸しっぱなしにしてくれるという篤志家が現れたのだ。高校時代に。彼の名は・・・仮にTとしておこうか。彼は高校写真部の同期生だったのだが、部活にはさほど熱心ではない男でカメラ自体に全くこだわりが無かったものだから平気で「ウチにこんなカメラあるんだけど使う?」と来たものだ。当時ミノルタ専門だった俺なのだがFE2と聞いては黙っていられない。早速ふたつ返事で借り出し、そのカリスマカメラの使用感に酔いしれたものだ。

 コンパクトなボディーに1/4000秒シャッター。しかもAE付きだ。それまでマニュアルフォーカスカメラといえば完全マニュアル機しか使った事のない俺にとってこれは新鮮だった。カメラというのはこんなに軽快になれるのかと、AF全盛の時代にアンチを唱えたい心持ちになったものだ。はっきり言ってこのカメラを握って以後、俺はAFカメラを買っていない。というか自腹で買ったAFカメラって1台もないよな・・・<俺。

 当時は確かFも同時に使っていて、すっかりニコン党に洗脳されかけた俺だったのだが、まさか他人のカメラの為に交換レンズを買うわけにも行かず、結局消化不良のままFE2は半年程度でオーナーの求めで返却してしまった。しかし・・・その時返しそびれたFE2の説明書は今でも実家に残されている。機会があれば是非お返ししたいのだが、その彼とは音信不通になってしまった。板橋で結婚して子供が生まれたところまでは分かっているのだが、それ以降の事を周りの誰も知らないのだ。

・ニコンF4
 前職、またその前段のアルバイト時代にしょっちゅうフィルム交換・レンズ交換をさせられたカメラだ。上にFM2をテイストレスだと書いたが、学校然り、仕事然り、どうしても義務がつきまとうカメラには愛着が持てないものだ。F4が登場したのは1988年の事で、当時の俺は中学生だったわけなのだが、ふと雑誌の広告で見たF4はあまりにもカッコ良すぎ、まだ写真には手を染めていなかったにも拘わらず暫く忘れられなかったという思い出がある。しかし、他人様が使うフィルムやレンズをホイホイ交換してやる稼業に身を置いてみるとこんなに忌まわしいカメラは他になかった。まず重い。先代の「F3」と違いモータードライブが内蔵式になったために、「簡単な撮影だからボディーだけでいいや」というカメラマン先生の選択肢を削いでしまったのは苦しかった。またあのツルツルのグリップ部。シボ加工がされていないラバームクのグリップは一応刻みは入っていたけれど滑りやすくて危険だった。(流石に落とした事はないが)それから欠点をあげつらえばきりがないのであるが、まあ何しろ坊主憎けりゃ袈裟まで憎いというお話、自分で使ってみればきっとイイカメラなのだろう・・・と、思う・・・。でもF5よりメカとしての美しさはあると思う。でもF3以降のFヒトケタにはどうしてもいい思い出がないのでくれると言われても貰わないだろうなぁ・・・。あくまで私見なんで、オーナーの方は怒らないで、ね・・・。

(来週につづく)



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