恍惚コラム...

第181回

 

CEOのカメラ思い出話
(10)「俺のじゃないカメラ達・パート1」の巻

 ・・・この連載を始めるにあたって、32種ものカメラの名前を列挙したのを覚えておられる方はまだいらっしゃるだろうか。この連載では全てのカメラについて書くつもりではなかったので仰々しく並べ立ててしまったのだが、まあ前回までの正味9回で俺自身が必死こいて買った・あるいは使ったカメラについてはほぼ書き尽くしてしまったのである。もちろん「正味」のもの以外で何かのはずみで入手したカメラというのもあるのだが、そういうものについてはあまり思い入れが強くないので本編には組み込まない事にしたのである。それにしても残りの25台。自分のものではないにしても思い出があるカメラばかりなのだ。というわけで今回からはその25台を順不同にして、それぞれについて短く語ってゆきたいと思うのだ。数回に分けて。もう暫くの辛抱なので、お付き合い願えれば幸いです・・・。

・ヤシカエレクトロ35DX
 「DX」だか「GX」だか良く思い出せないのだが、まあどちらかだという事には間違いないヤシカ製レンジファインダーカメラ。このカメラとの出会いを発端として俺の人生は転落への一途に・・・。そう、これは俺が幼稚園児だった頃に父親が使っていたカメラなのだ。物心ついて初めて目にしたカメラなのでもう珍しくて珍しくてスキを見てはいじり回すわ記念写真を撮る時には必ず父から奪い取ってシャッターを切っていたという、俺のカメラ魂を覚醒させた金字塔的存在なのである。今思えば40ミリのF1.7(だっけ?)というマニア好みのするレンズを付けたイイカメラだったのだ。調べてみたらこれは昭和50年発売。俺も50年生まれ。この事から推察するに、俺が生まれたから奮発して買っちゃったんだろうなと思うと何だか泣けてくる・・・。7〜8年前まで故障品ながらも保管されていたのだが、今はもう不知。漢のロマンが分からない母親に捨てられた可能性大。合掌。

・ニコンピカイチAD2
 俺が小学5年生の頃だから1985年位か、上記のヤシカの後継としてやってきたコンパクトカメラ。当時としては標準的なスペックのカメラながら、オートローディングやDXコード読みとり機能を搭載していたのには当時驚かされたものだ。しかしそんなスペックよりも何よりも、俺が当時好きだった女の子を撮ろうとして慌てて落として破壊・修理したという苦い思い出の1台。開いた裏蓋からはみ出すフジカラーHGが目に沁みたあの日・・・。それ以来、カメラは落とすべきものじゃないという事を肝に銘じて生きている俺なのである。それからこのカメラはどこかで読んだ「折り畳み傘の先のキャップを外すとネジがあるのでそれを三脚代わりに使う事が出来る」という裏技の餌食になった事も思い出深い。最初は本当にうまく三脚代わりに使えたのだが、そのうちにプラスチック製のネジが折れてネジ穴に入り込んで取れなくなってしまったという情けないヤツ。その後の転帰は不明だ。

・ミノルタα507si
 父が数年前に池袋のさくらやで買ったカメラ。最近のカメラなので知っている方も多い筈。まあこいつは殆ど実家にあるものなので俺には基本的に関係はないのだが、たまに何かの記念写真を仰せつかった時には借りに行って使うカメラ。何しろ自分ではストロボ付きAF一眼レフはおろかズームレンズさえ持っていないもので・・・。頭の「5」は中級カメラの証。でも最近のこのクラスのカメラはあからさまにスペックが削られてるわけではないので吉。昔のこのクラスはプログラム専用が当然だったのになぁ・・・。この流れを作ったのはキヤノンの初代EOS1000だったと思うのだが如何。

・ニコンF2チタン
 「チタン」―腕時計にしろカメラにしろ、これは高級品の代名詞である。そう、これはニコンがかつて出してきたフラッグシップ機のチタン外装版、超レア物なのだ。しかも俺が手にしていたのはその「チタンブラック」で、数百台しか作られなかったというから恐れ入る。何故にこんな貴重なカメラを手に出来たのかと言えば、これは高校時代に学校に出入りしていたアルバムカメラマンの方が2ヶ月程度貸して下さったものなのだ。20ミリレンズ付きで。自分のものではないという事でさほどハードには使えなかったのだが、その素性の良さは十分に感じ取ることが出来たものだ。昭和54年発売。

・ニコンF601
 叔父が持っていたカメラ。個人的には「F601M」というマニュアル専用機を使ってみたかったのだが、こちらはごく普通のストロボ内蔵AF1眼レフカメラだ。「写真に光のスパイス」とか何とかいうキャッチコピーで売られていた事からも分かるように、この頃は中級1眼レフにストロボが内蔵されている事が珍しかった時代だったのだ。特にニコンのような保守的なメーカーとしては。ニコンらしく質実剛健なカメラだったのだが、巻き上げの速度が何だか鈍重だった事が悔やまれる1台。好きなんだけどね・・・。高校生の頃、しょっちゅう借り出しては使っていたのである。平成2年発売。

・ニコンF301
 これは自分で買ったカメラだ。大学1年生の頃に新宿のカメラ店で3万円台で買った記憶があるのだが、これはニコンのマニュアルフォーカスカメラでモータードライブの付いたものが当時必要だったという事情で買ったのである。本当はF3だとかFE2にモータードライブを付けて使ってみたかったのだが予算の都合で・・・。でも皆様ご存知だろうか。こんなカメラ。しかしこれは本当にマイナーな1台なのだが面白いカメラだった。実はコレ、ニコンが初めて量産したAF1眼レフ・「F501」からAFのセンサーを取り除いただけという非常に微妙なカメラだったのである。当時のニコンらしからぬプラスチック外板といい、単4乾電池使用という点といい、異端もいいところなカメラで見た目もアレだったのだが、実用的には全然問題なし。これほどのカメラを中古とは言え3万円程度で手に入れられるのは有り難い事だった。重めなボディーも当時愛用していた180ミリF2.8EDとは程良くマッチ。んん〜、また握ってみたいカメラなのではあるが、大学1年の冬だかに府中の競馬場でカメラバッグごと落として昇天。動く事は動いたのだがフランジバック(レンズの基点からフィルム面までの距離だ)が狂って使い物にならなくなりそのままレンズともども売却・・・合掌。昭和60年発売。

(来週につづく)



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