第160回

 今年もまた連休の声を聞く季節となった。昔は黄金週間と呼ぶのが普通だったような気がするが、段々「黄金週間」と「ゴールデンウィーク」の比率が逆転してきて、近頃ではテレビニュースでも新聞でも「ゴールデンウィーク」と呼ばれるようになっている。・・・まぁ呼び方などはどうでも良いのだ。皆さんはこの連休をどのようにお過ごしになるだろうか。海に山に。川に湖に。そして水の事故、交通事故、高速道路の渋滞・・・フフフ・・・。くれぐれも、この連載をお読みになった皆様だけはご安全にお休みを満喫されるようお祈り申し上げます。本当に。

 俺個人的には本年で満27歳を迎える訳なのだが、この歳に至るまでまともに連休をとれるような大企業に勤めたことがないので連休の有り難みを享受した事はまるで無いのだ。前職は電話一本で24時間対応な世界だったので一瞬たりとも気の抜けた事はなかったし、現在の仕事も悲しいかな小企業のサラリーマン稼業、暦通りどころか28・29日の出勤は確定済み。しかもどちらも早朝。一体連休の何するものぞ、と言いたくなるのである。言い回しを換えれば「もうね、バカかと。アホかと。」といった趣なのである。そんなわけで本連載には珍しく金曜日にこれは書かれているのである。いやー、酔眼と肩凝りは執筆活動の敵ですな。だから言ったじゃないですか、コイズミさん。景気が良くなるまで祝日禁止って。700億円もかけて官邸建ててる場合でもないし辻元女史を泣かせている場合でもないんである。700億円あれば国民一人一人に500円くらいずつ配れるし、辻元女史じゃなくてその秘書達を呼ばなければ何も実のある話を聞けないということは明白だったじゃないですか。つまらんねぃ。

 さて、何でこんな愚痴っぽい話になっているかと言うと、最近俺の勤めている会社に新しい取引先が出来て、そこのお陰でもうここ2、3日すっかり気が抜けない状態になってしまっているのだ。携帯電話が鳴るのがもともと好きではない俺なのだが、もうこんなに忙しくなってくると携帯電話が鳴るだけで眉間に皺が寄り、胃酸は多量に分泌され、肛門もキュッとしちゃうのである。だからといって客からの電話に出ないわけにもゆかないのだけれど・・・。何故にかくもピリピリしているのかと言えば、その会社は俺が勤めている会社と違って営業マンしかいない会社なのである。俺が勤めている会社はきちんと掃除が出来る人間を高い給料で抱えて、そのメンツがこなせる仕事だけを受注して食っていきましょうというスタイルなのだけれど、そこは平たく言えば「仲介屋」。もともと玄関マットのリースを業としてきた人々が集まって作った会社で、そこがひたすらに、自分たちが出来るわけでもないのに掃除などを方々に売り込んでいるのである。そしてその見積もりをウチの会社(=俺)にさせて、その見積もりに自社の利益分を乗せて客先に提出するのである。これは怖い。経験のある人間がセールスに行けば、「このガラスには登っていけるな」とか「このシミは落ちるな」と言った事が分かってそれなりに客と話が出来るのだが、経験のない、ひたすら売らんかなとしている人たちはどんな客の要望にも気安く返事をしてしまうし、汚れが落ちないからといって文句を言われるのはウチの会社だ。そんな中、向こうは営業だけしていればよいから効率的に見積もり依頼を拾ってくる。それがここ2、3日5本くらい溜まって、しかも早く出せ早く出せとせっつくのだ。そして何より困るのは向こうの利益を考えてウチとしても安く見積もりを出さなければならない事。これが今一番苦しいのだ。

 ご存知の通り掃除屋の時給、人工(にんく)代はそれなりに高い。しかも経験を積んだ者ほど高くせざるを得ない。会社組織としてシステマチックに人を雇用していれば当然の事だ。で、このシステムを破綻させるのはどういった人たちだろうか。・・・それは大手の仲介屋と個人営業者(請負専門人)である。大手の仲介屋はどんどん人を雇って客に絨毯爆撃をかけることが出来るし、個人営業者はとにかく自分や家族だけが食っていければ良く、経理を雇う必要も無ければ総務も営業も要らないから必要最小限の金額でその仲介屋の仕事を受ける事が出来る。結果として掃除の単価は大手に切り崩されてゆくのが現状なのだ。俺が居る会社のようなスタンスでは先細って行く構図が見えてきている。そこで今述べているような下請業も始めてみているわけなのだが・・・。

 ええ、これじゃ高校生とか大学生とかのバイトだけ使わなきゃ無理です。終身雇用なぞ夢のまた夢です。中小の掃除屋は解散してそれぞれの人たちが個人で請負業を始めるような時代が迫ってきているのだ。悩ましいわぁ・・・。この業界、大手が中小を買収するスタイルは成立しないと思うのだ。中小の人たちが辞めて独立する=>そういう人たちが増える=>そうなるとどんどん安く請けられる人が増える=>大手がその人達を歩合制で囲う=>中小の雇用は崩壊するという構図。

 まあ俺もこの先何年掃除業界に居るか分からないけれど、こんな取るに足らない(と、思われている)世界にもそれなりの悩みがあるわけで・・・。皆様の業界は如何でしょう?
 連休なのに辛気臭い話で申し訳ないねぃ・・・。 学生の皆様にはつまらない話を致しました!
 


メール

帰省ラッシュ