第16回

 
 学生時代・・・といえばペギー葉山。それはさておき、今でもしばしばフラッシュバックしてくるのは学生時代の記憶である。高校時代しかり、大学時代またしかり。あのモラトリアム時代の甘さを今でも反すうしてしまう俺は甘いのだろうか?まあ結局学生・生徒というのはお客様だからねえ。こんな事を言っては学生・生徒の皆さんに大変失礼なのは重々承知しているのだが、やはり学校というのも全くの無料じゃやっていけないものなのであって、公立の学校にしても私立の学校にしても或る程度そこに学ぶ人々は「お客様」としての待遇を受けているんじゃないかと思うんだね。先生も「お客様」には手を出せないし、「お客様」だからこそ、いい大学に行って頂きたいと日々調教にお励みになる。
 まあこんな事を書きたかったわけじゃないのである。どうも辛気臭くなっていけない。俺って実はネクラだからね。(中学の頃、「根暗新聞」というのを出していたくらいだから。1部15円。)実は大学時代の笑える?ネタを書いてくれと、スガワラ氏から指令があったのだった。
 俺が通っていたのは、日本大学芸術学部写真学科。これだけ聞くとなんてオシャレでモードで小粋なんだろうと思われる御仁も多いかと思われる(思わないっちゅーの)が、実はホントに田舎も田舎、1・2年次はいまダイオキシンで話題の所沢校舎に学ばなければならなかったのだ。それゆえに日芸のレベルは低いのだと揶揄する者さえ出ているんだな、最近では。しかし俺も川越市出身なので五十歩百歩と言えなくもないんだなコレが。
 で、どのくらい田舎かというと、コレがなかなか筆舌に尽くしがたいんだが、まず最寄り駅から徒歩40分以上かかるというのがやはり真骨頂だろう。故に学生達は(教員達も)学校バス・若しくは路線バスの利用を余儀なくされている。近所に下宿している輩は自転車やスクーターで来ており、俺はそれをうらめしく思っていたものだ。大体、実家から中途半端に遠いのがいけなかった。川越市と所沢市は隣同士。これがもっと離れていれば何とも思わなかった事だろうが、憎らしいことに自転車で通えない距離じゃなかったんだな、所沢校舎。気合いで行けば40分前後で到着することが出来たのだ。で、ちなみに自転車&電車&バスで通うと50分くらい。何とも悩ましい選択だったのだよ。でも結局俺は自転車通学への道を諦めた。自転車だと飲んで帰れないだろう?異議のある人は手を挙げて!まあそれでも本川越駅(西武新宿線)から実家まで自転車で20分くらいかかったんだけどさ。あんまり遅くなると自転車預かり所のおばあちゃんに締め出されるんだな。
 まあそんなこんなで我々日芸生は所沢の田園にそそり立つ場違いな白亜の学舎に通い続けていたんである。そんな中でひときわ目を引いたのは「エネルギー棟」。この塔の存在によって所沢ウオーカーは道に迷わずに済むのであるが、いったいあの塔―高さ20メートル程度の白い?タワー―の中で何が行われていたのか?何故かそれを知る学生は残念ながら俺の周りには皆無だった。一部ではさる老講師が某教授にサイボーグ化されているのではないかという憶測も飛び交ったが、冗談じゃなくマジであのタワーの意味が知りたい。これを書いていたら無性に知りたくなってきた。もし関係者のかたがお読みになってたらメール下さい。
 しかし普通、学校のバスというのは無料で乗ることができるものだが、そのバスは何と片道100円の料金を徴収していたのだ。これもまた日芸のセコさを露呈するエピソードである。しかもそのバスに乗るためのチケット(通称「バス券」)は学校の事務室でしか買えなかったため、その券を持っていないとバスに乗ることは出来なかったのだ(現金は不可!)。そのため西武新宿線航空公園駅の前では毎日のように「バス券持ってる?バス券。」の声が聞かれることとなったのだ。或る時バス停のベンチに「バス無料化!!」の落書きが現れた事があったが、私も至極同感。何たって年に140万円も学費を取っている学校だもの。
 田舎といえば、周囲に店がないというのも欠かせないファクターだ。日芸所沢校舎もその例に漏れず、まったくと言っていいほど近所に使える店がなかった。最近では結構コンビニなどが出来ているようだが、私が所沢校舎に通い始めた5年前などにはそれこそ酒屋しかなかった。大学の購買部ももちろんあったのだが、何しろ実質上それしか店がないような状況だったのでその混雑ぶりたるや尋常ではなかった。昼休みともなればそれこそ全学生が売店に殺到し、まさに阿鼻叫喚地獄絵巻が展開されていたのである。それこそ鼻をつままれても分からない感じ。コピーも思うように取れなかったのである。ちなみにその売店の屋号は「大薮(おおやぶ)」。正式には「オオヤブコーポレーション」と言うらしいが、誰もが「おおやぶ」或いは「ヤブ」と呼んでいた。「ヤブ」は日芸生の合言葉だ。例えモグリで日芸に潜伏したとしても、「ヤブ行ってくるわ」の一言が言えれば立派な日芸生として認知されること間違いなし。
それはさておき、我々は結構その酒屋に通ったものだ。余りにヒマだとそのままワンカップを買って飲んだりして・・・。(続く)
 

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