第142回

 こんなにも正月が疎ましいと思った年は嘗てなかった。昨年の歳末は21世紀になるからと俺も含めて誰もが浮かれた気分になったものだが、今年はただただ忙しいと思うのみ。なまじ正月なぞがあるばかりに仕事が詰まり、取引先は休み、ろくに金の勘定もしないまま細かい仕事ばかり引き受けてしまうこの年の瀬。ああ、この時期儲かっているのはデパートやらカラオケ屋ばかりなのだという事を身に沁みて感じる今日この頃。定価がちゃんとある商売はやはり羨ましいものだ・・・(注・著者は掃除屋です)ちなみに今夜も徹夜だし・・・。明日も仕事だし・・・。前にも書いた「日本常夏化計画」、年末ジャンボが当たったら可能ですかなぁ?走るのは「師」だけではない。雑魚も走るのだ。読者の皆様はどのような師走の暮れをお過ごしだろうか。

 そういえば正月に係る感慨が、近年ますます薄れてきているような気がする。コンビニも銀行ATMも今ほどにはなく、正月3が日といえば誰もがきっちり休んでいた時代を思い出してみると、あれはあれでうまく行っていたのだと思うのだ。面倒と思いながらも親戚の家に行き来し、人通りの少ない路地で時たま行き会う人の姿に驚くような静かな正月は今はもう無い。スーパーは元旦から当然のように店を開けるし、コンビニやら居酒屋チェーンやらの従業員として年を越す若人は果たして何人居るのだろうか?恐らく相当な数に上るのであろう。そんな中、正月は悪名高い「ハッピーマンデー」並みの格の低さに成り下がっているように思えるのだが如何だろうか。景気が悪くて売り上げが少ない小売店が多いから1日でも多く店を開きたいという事情がそこにはあり、それが正月ならではの情緒を損なっているのだろうが、それならいっそのこと全国的に「正月・冬休み禁止」令を敷いてみるのは如何だろうか?景気が回復するまで。そこに正月や冬休みという言葉や概念があるから人は休みたいなと思うだけなのだから、いっそその概念を取り払い、冬休みは学生だけの特権として社会人は何食わぬ顔をして仕事にいそしむべきだと思うのだ。

「厚生労働省施行令第691819条
 1 何人も、年末や正月を理由に業務を停滞させることはしてはならない。
 2 前項に違反する事業所には業務停止命令若しくは30万円までの罰金を科す。」

 いや、これが施行されたら本当に嬉しいと思う俺なのだ。正月の経済効果がいかほどの物なのだか俺は知らないけれど、人を遊ばせておくよりも、そして一部のレジャー・輸送関係のみに儲けさせておくよりも一年中均等に富が分配されてゆく方が世のため人のためだと思うのだが、ラジカル過ぎるだろうか?俺は全然正論だと思うけれど・・・。取りあえずボーナスは1ヶ月分出る世の中にならないと俺は納得出来ない・・・。

 休みといえば、来年度から公立学校が完全週休2日制になるわけなのだが、これも何だか世間を騒がせないうちに決定してしまった感がある。欧米の基準に合わせるべく子供達にゆとりを、という橋本龍太郎前首相の思想があったわけなのだが、これは亡国論に他ならないと俺は思うのだ。数ヶ月前にさる私学の全面広告にこんな台詞があった。「ゆとり教育ム日本を滅ぼす亡国の思想」・・・正確な文言は失念したがまあ同様の意味の事が書かれてあったと思って戴きたい。蓋し名言である。激しく同意した。天下の朝日にこんな広告を載せるなんてと感動した。円周率を「3」だと教えたり、台形の面積の公式を教えなかったりという点が巷間話題に上っているが、俺はむしろろくに受け皿も用意しない内に学校から子供達を突き放す格好になっている部分に怒りを覚えるのだ。うち続く不登校・学級崩壊・教員の不祥事・少年事件に対する答えがこれだとしたらあまりにもお粗末だろう。今も昔もいじめはあり、学校に馴染まない子供は居るものなのだ。それを学校のシステムひいては授業時間及び内容に転嫁する事は誰でも出来る猿知恵だ。教科書の内容が分からないから子供は授業中に騒ぐのだろうか?そうではないだろう。昔の難しい教科書だって子供は今よりも静かに授業を受けていたはずだ。俺(昭和50年生)の世代でも教科書は大分柔らかくなっていたやに聞いている。それでも俺達はそれなりの教員の下で授業を成立させていたのだから、これ以上無闇に教科書のレベルを落とす事は学校の権威を放棄する結果になりはしないかと思うのだ。また語弊はあるだろうが、授業が分かっても分からなくても一定時間子供達を学校の机の前に座らせておくだけでもなにがしかの効果はあると俺は思うのだ。人はしばしば自由を履き違える。ただでさえ家事の類をしなくなった子供を見せかけだけのボランティア活動や慰問なぞ(それも短時間の)に従事させ(大体学校で「させられる」のだから全然ボランティアの理に叶っていないではないか)、あとは好きに遊ばせておけというのでは少年事件は絶えないだろうし、時代は今ますますボーダーレス・即ち誰でも何でも出来、何にでもなれると思わせる錯覚の時代に入っている。これは子供達にとっては危険な現象ではなかろうか。酒を飲み、タバコを吸うだけなら全然かわいいものだが、我々の想像を絶する事が目の前で次々に起こっているではないか。このような言い方は出来るだけしたくはないのだが、今こそ「子供の領分」を引き直し、子供を権威のある学校に戻して行って戴きたいと思うのである。さもないと本節冒頭に引用した思想を持つ私学に子供は取られて行き、結局公立不信が蔓延し、金がなければロクな教育は受けられないという時代が必ずやってくる。
 

  


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