・・・これだけはしてはいけないという禁じ手。つい最近にもこのような主旨の事を書いて皆様からアンケートを頂戴した事があったが、俺はこの度「絶対にしてはいけない事」として次の1項を新たに設けたいと思う。それは「知り合い相手に商売をするな」これである。
飛び込み営業という仕事があると言う事については皆様既にご承知の事だと思う。何処の馬の骨とも知らない人の店や家に押し掛けてモノを売ろう、というアレである。保険屋が来たり、竿竹屋が来たり、偶にはアャシゲな宗教の冊子を配る人も現れたりするのに皆様辟易された事も多いであろうが、俺は今それをする方の最前線にいるのである。
いざ自分がこの仕事に就いてみると、これが予想通りの辛さなのである。もっとも最近は慣れが出てきたので大抵の客に張り付いた(?)笑顔をお届け出来るようになったのだが、最初の頃は辛かった。モノを売るのならまだしも、俺が売っているのは掃除というサービスなのである。カタチのないモノをいかにいいもののように見せかけて売るか。これは偏に話術と身なりとの賜物、これでしかない。身なりやルックスはもう生来のものなのでどうしようもないから、鍛えるべきは話術。そしてどんな客の対応にも動じない笑顔。これだけなのである。
さて、そうした商売の効率がすこぶる悪いと言う事はもう皆様の想像に難くないであろうが、正しくその通りなのである。もうここには書けないくらい実にならない仕事なのである。もはや金を生み出さないこの行為に対して仕事という呼び名を与える事自体面目ない事なのである。折しも不景気。バブル前夜に開業し、当時はもう左団扇だった俺の居る会社にも最近では大いなる不景気の風が吹き込んでいる。月二回来てくれと言っていた客が月一回でいいと言い出して、しまいには隔月でいいと言いだすし、大手の攻勢も厳しいものがあって床洗浄・ワックス掛けが平米80円前後でないと極端な話受注出来ない情勢となっている。掃除屋の時給が高いと言う事は皆様求人広告などをご覧になってお分かりかと思うが、熟練度の高い職人ほど平米単価の足枷となってしまう。腕のいい人に仕事をしてもらった方が良いという事は当然なのであるが、失礼な話学生アルバイトや年輩の方を安い給料でこき使って昇給される前に辞めさせた方が会社は大きくなってしまうものなのだ、このご時世。事実、そうして下請や現場の人を苦しめて大きくなった会社を俺は何社も知っている。実働部隊を持たない会社の方が偉くなれる、これは何処の業界でも同じ事なのだろう。
まあこのような話はまたの機会に措くとして、そうした厳しい情勢の中で飛び込み営業者が逃げ込む最終手段とは何だとお思いだろうか。簡単な事だが、それは知り合いをおいて他にない。保険とか車の営業さんなら実家の親にそれらを売ったりする方法もあるかとは思うがさすがに掃除はそのような性質の物ではないのだ。第一実家は掃除屋を頼むほど広くないし・・・。
そのような訳で俺は愛すべき母校の高校に掃除の話を持ちかけに行ったのだ。かつての面影があるとは言え、背広にネクタイ姿の俺を事務のお姉さんは素直には通してくれなかった。いくらOBだと言っても商談にあたって職員室に入る事は罷りならんと言うのだ。それでも食い下がると彼女は教頭(当然俺とは顔見知りだ)を呼んでくると言って暫く消え、結局出てきたのは髭面の事務長だった。ひとしきり高校を出てからの波瀾万丈を告白し、何でカメラマンにならなかったのだと言う彼の言葉を骨の髄まで染み渡らせながら会社の事業内容の話をする俺。結局その話に彼が乗ってくる事はなく、残ったのはただただ寂寥感ばかりだった。だがもし、この話が成約に結びついたのならどうだったろうか。それでも何か寂しい気がした筈なのである。金が絡むとそこには必ずビジネスライクな感情が起きる。俺はこの職についてからというもの、決して高校には行くまいと思っていたのだが、俺の上司も大学の同期の人にあたっていると聞いて渋々行ってみればこのバッドトリップだ。世の営業マン諸氏がどのように昔の人脈をお使いなのか是非お伺いしたい今日この頃なのである。
さて、そんな事よりもずっと俺をブルーにさせる事態が今目の前で進行中なのだ。かねてよりDOS/VユーザーをはじめMac信者にも鬼っ子扱いされているG4キューブが、この原稿を書いている最中にも6回ほど勝手にスリープ・強制終了を繰り返しているのだ。もう段落ごとに落ちているといった具合でものすごくうっとうしいんである。頭に来て電源ボタンの辺りを叩いたら落ち着いたのだが(おかげで前の前の段落から問題なく動作している(-_-;))、やっぱり修理に出すべきなのだろうか・・・。Apple社でもどのパーツが悪いかということは把握しているみたいだし。つーかそんなコトは設計段階で気づけよ>スティーブ。我が社唯一のパソコンが原因で更新休止になる日も近い・・・かもね・・・。
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