第131回

 ええ、ものすごく眠いです。これを書いているのは2001年10月7日のお昼過ぎなんですが、とにかく眠い。理由を話し出したらものすごく長くなりますわよ・・・?やっちまったんです。安さにつられての使えない機械衝動買い。生まれて初めて行列に並んでまでモノを買った(たこ焼き屋で並んだ事くらいはあるけれど)というのに使えないってぇ事は今までの半生の中で初体験なんですわ。こう見えても。

 それはある朝、会社で取っている新聞に入ってきた1枚の折り込みチラシから始まったのでした。俺の生まれ故郷であり庭でもあった埼玉川越のサンロードなる商店街にあの超有名パソコンショップの「ソ○マップ」が出来るらしいという情報は前々から小耳に挟んでいたのですが、その開店セールがあると。そのセールでは1日何台限定という目玉商品がいくつもあって、行列は必至な状態だったわけですな。そのソ店の開店は10月の4日で、その日から3〜4日、日替わりで魅惑の商品を美人局状態で売り出そうという魂胆だったんですね。そこで俺は見なくても良い物を見てしまった・・・「10月7日 iSub 980円 限定150台」

  iSubというのはiMacに装着して重低音を強化しようというサブウーハーの商品名なわけですが、これが980円というのはモノスゴク安い。通常は1万円を少し欠ける位の値段で売っている物なので、俺はまずその値段に驚愕し、パチ物ギワクまで抱きました。そして俺は俺なりに考えたのです。仕事中に通勤中に晩酌中に。980円でiSubを買うために睡眠時間を削って行列に加わるか。はたまたそんなデカくて置くところもなさそうなスピーカーを、しかもMacでろくに音楽も聴かないくせに買うのは如何なものかと。俺は会社でそれとなくソ○マップの話題を持ち出したり、旧知の友人が新PCを買うにあたってはソ○マップに行けと助言したり、じわじわと高まってゆくiSubへの物欲を昇華させようとしておりました。この3日間。しかし、そういう事を考えている間、人はすっかりその気になっているものなのですね。少なくとも俺の中でiSubを買わない理由はそうでない理由よりも勝っておりました。考えてもみて下さい。8割引で、自分に関係がなくもないモノが、そう遠くない場所で売っている。さらにそれは他の限定商品とは違って150台限定だと。先述の友人は10台限定のPCを同店にて10人中8人目ということでめでたく購入したのだと俺は昨日聞いていたので、更なる楽勝感が俺を襲いました。ちなみに夕べは置き場所を考えながら寝ました。本当にバカヤローです。

 かくして10月7日の朝はやって来ました。日曜日の午前中には早朝パートに出ている妻の代わりに俺が家事をしなければならないため、俺は今朝5時30分に起床しました。この我ながら異様とも思える早朝覚醒に、iSubへの物欲が関与していた事は言うまでもありません。いそいそと、自分である事すら疑わしくなるような機敏さで俺は洗濯をし、アイロンをかけ、食器を洗い、その後メールチェックなぞをしながら出発の時に備えておりました。そしてこみあげる征服感とこれからやってくるiSubのサウンドっぷり?にいろいろな部分を上気させて出かけていったのでした。
 午前9時前に同店に到着。既に80名からの人々が、それぞれの熱い思いを胸に行列を作っておりました。俺も「87/150」と書かれた整理券を受け取ってその中に加わったわけです。周囲の人々は皆一様にチラシを見つめており、手ぶらで行った俺が何だか間違っているかのような雰囲気でした。右隣に居る2人連れがお互いに目を合わせずにPCやゲームの話に興じているのを不気味に思いながら、そして通りを歩く人に俺はどう思われているのだろうと思いながら佇んでいると、開店時間の10時を待たずに−9時45分くらいに店の門が開きました。

 整理券を握りしめた人々が猛ダッシュで店内に駆け込むかと思いきや、案外と冷静な群れ。案外すんなりと引き替え場所に向かう事が出来ました。そして俺はついに手にしたのです。iSubを・・・。案外と重いそのオシャレな箱にはこう明記されていました。「システム要件:アップル社の350Mhzの新iMac、iMacDVおよびスロットインCD−ROMまたはDVD−ROMのついたiMacDVSpecialEdition」・・・どうやらiMac系専用のモノのようです。しかしこの時点で俺はまだ何かを信じていました。店内でディスプレイされていたPowerMacG4にもこのiSubが繋がれていたからです。今思えばこれはトンデモナイ詐欺行為だったのですが・・・。

 さて皆様。もうオチはお分かりですね?iSubはiMacにしか付きません。何をどう頑張っても、いかなるシステムを使ってもiSubはiSubなのです。ウチの地獄マシーンG4Cubeにも、いわゆる「ポリタンク」なG3/G4系にも付きません!このときめきの残滓を俺は何処に向けたらいいんでしょう。購入後1時間もしないうちにお部屋のインテリアとなってしまったiSubに合掌・・・。

 ちなみに、この騒動のおかげで今まで分からなかったAppleStudioDisplay15インチTFTの傾け方が分かりました。ケーブルを繋ごうといじくりまわしているうちに力が加わり、何事もなかったように傾いてくれました。おかげでこの原稿はかつてない快適さの中で書いております。

はぁ・・・。

  


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