第108回
近頃、「川越東高校写真部公認ホームページ」の「日記帳」を愛読している俺なのである。正直、オーナーのスガワラ殿には申し訳ないのだが、初めの頃はロクにチェックもして居なかった俺だったのである。しかし、何かの拍子に熟読してみたら、これがなかなかに面白い。何だか俺の心のむずがゆい部分をピンポイント攻撃してくるような愉しさというか、懐かしさというか。俺も大学に入りたての頃は何だかとんがってたなぁというか、とにかくそのような心持ちになるのである。特に、ここで名前を挙げるのは申し訳ないのだが、「寅次郎」氏の文章に俺は得も言われぬ感銘を受けるのである。いや、他の皆さんの文章がどうだと言う訳ではなくて、俺的に大学時代には寅次郎氏と似たような心境だったなぁという意味なのである。誤解の無きように。 渋谷で酒を飲んだ話だとか、俺は誰かを傷つけるために産まれてきたんじゃない、と語る件だとか、そのような辺りに俺も心当たりがあるから、俺は氏の文章を追いかけるように全て読ませてもらった。というかもう分かりすぎるほど分かってしまうから、それこそ目を泳がせながら読ませてもらったというのが本当の所だ。 男子校を出て、共学の大学に進む。しかもその場所は東京。昔ほど東京と地方の格差が無くなったとはいえ、そこはやはり東京だ。何かが埼玉とは確実に違うのである。外車が当然の様に走り、それなりの店が軒を連ね、流行のモノたちに確実に触れられる土地・東京。それプラス年頃の男と女(敢えてこう言うことにしよう)が揃ったら、それはもうプチ修羅場になるのは当然の理。それに悩み、文章を書いてその悶々とした考えを整理しようとする心持ちが痛いほど俺には伝わってくるのである。あまりはっきりとした物言いをしていないのもまた奥ゆかしくて愛しくなるのだ。そんな中でも俺が特に好きだったのは「今日の飲酒」のコーナー。いい!良すぎる!競い合うように学友たちとボトルを空けあったあの頃が蘇ってくるようだ・・・(いや、ウイスキーのボトルは空けなかったが・・・せめてビールかワイン。下戸なので。)いちいち講釈するのはイヤミだと俺も自覚しているのでこの話はこの位にさせて戴こう。ともかく、今後とも同コーナーに注目してゆきたい俺なのである。 しかし、やはり俺も考えに考えたものだ。上の「日記帳」に書かれているような事柄について・・・。叶わぬ恋を成就させる方法だとか、より自分に適している職業とは何かとか。否、そんな大局的なことではなくても、一番ウマい煙草の銘柄は何か、あるいは一番気持ちいい自慰行為の方法はどれか、それから良く出るパチンコ店は何処か・・・。今思うとどれだけ多くのことを考えていたのだろうかと思わされるものだ。今現在と比べて。 妻を持ち、定職に就くと考えられる事の巾は学生時代に比べて格段に狭くなってくる。新聞のチラシを本気で眺められるか否か。その辺が社会人と学生を峻別する最も卑近な例だと俺などは思っているのだが、ともかく生活は厳しい。慣れてしまえばどうと言う事はないのだが、学生時代から較べればやはり世間の荒波に揉まれている実感はある。モノ・サービスを売る会社・その中の自分。世間の景気を肌で感じながら、自分の仕事がその稼ぎに直結するというのはやはり学生時代とは全く違う環境なのである。金はなかったけれど時間だけは我が掌中にあった学生時代を想うとき、やはり学生時代というのは自由だったという当たり前の事を思い知らされるのだ。 今回は何だか説教くさい内容に終始してしまったが、ともかく俺がその「日記帳」を読んでむずがゆい気持ちになっているということを伝えたかったのだ、今日は。どうかお気を悪くなさらないように。 |